警戒感は世界に広がっている。同紙によるとオーストラリアは2月4日、データセキュリティ上のリスクを理由に政府のシステムでの使用禁止を決定。韓国の主要省庁も同じ週に同様の措置を取った。イタリアは1月の時点ですでに使用禁止に踏み切っている。
リスクを受け、EUは独自の動きを加速している。AP通信によると、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はパリで開かれるAIサミットで、官民パートナーシップによるAI開発構想「カレントAI」の発足を正式に発表する見込みだ。
これまでAI開発はアメリカと中国が主導してきたが、フランスのAI企業「ミストラル」など新興勢力にも成長の機会を与えたい考えだという。中国依存のリスク低減も視野にあるとみられる。
セキュリティ・リスクを考慮した選択が求められる
DeepSeekを手にした中国に、アメリカの制裁が通用しなくなったとの見方も出てきた。ニューヨーク・タイムズ紙は、米政府による技術輸出規制の有効性が問われていると論じる。現在はAI用の高性能チップの対中輸出を制限しているが、低コストで動作する技術が完成された今、その実効性は大きく損なわれた。
同紙は、AIの「軍拡競争」が世界で加速していると論じる。「少なくともDeepSeekは、AIの軍拡競争(開発競争)が本格的に始まっていることを示し、そしてここ数年の目まぐるしい進歩の後も、まだ私たちを驚かせる展開が待ち受けていることを証明した」と記事は結んでいる。
もはやAI開発はアメリカ企業の独壇場ではない。中国がそれに匹敵する品質を実現し、EUも続こうとしている。過去に中国で誕生したTikTokは、危険性が指摘されながらも、世界や日本を席巻した。
データ流出の観点でより危険と言われるDeepSeekは、国内で同様に普及してゆくのか。「速い・安い・旨い(回答品質が高い)」となれば必ず検討の俎上に上がるが、セキュリティを意識した慎重な選択が求められている。