2024年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお届けします。キャリア部門の第3位は――。
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▼第2位 19人育てた里親「親のない子はこんな残酷なことになるのか」里親から引き離される晩に小2男の子が言ったこと
▼第3位 「ブックオフせどり」が生きる希望だった…元ひきこもり・無職の男性(41)が"年商36億円の古書店"を作るまで
▼第4位 英語ができない人はチンパンジー扱い…「日本人の米グーグル副社長」が31歳から英語を猛勉強し始めたワケ
▼第5位 小中学校9年間、1日も通学しなかった…藝大卒の作曲家が6歳で「絶対に学校には行かない」と決心した"大事件"
創業17年で売り上げ70倍を達成した古書ビジネス
「実は僕、躁うつ病なんですよ」
そう切り出したのは、長野県上田市で古書ビジネスを営むバリューブックスの創業者、中村大樹さん。躁うつ病は気分が高揚する「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」が繰り返される精神疾患で、双極性障害とも呼ばれる。
中村さんが2005年に一冊の本を転売したところから始まった古書ビジネスは、Amazonや楽天を通じて成長を続け、2024年6月度の決算で売上高36億300万円を記録した。2007年に法人化してから17年間で約70倍に売り上げを伸ばしたことになる。
移動型書店「ブックバス」や人気ポッドキャスト番組への書籍提供、「本だったノート」の販売など、遊びの延長のようにユニークな事業を次々に打ち出しながら、企業規模を大きくしてきたバリューブックス。
「うつっぽいときは、人を沢山巻き込んで売り上げをあげて収拾がつかないのにどうするんだ、という気持ちになるし、躁状態のときは、もっとやってやろう、もっとできるはずっていう感じになります」
同社が驚くべき成長と幅広い取り組みを実現してきた背景には、中村さんの躁うつ病が影響していた――。
周りに流されて生きた少年時代
1983年、長野県千曲市で生まれた中村さんの幼少期は、意外にも読書や本との関わりが薄い。サッカーは楽しくて高校まで続けたが、進学も遊びも、周りをみて「そういうもの」と疑わず、「ずっと周りに流されるように生きて」きたという。
高校時代、人生で唯一のアルバイト経験をしたのも、サッカー部の先輩に「給料がいいから」と誘われたから。清掃の仕事はやりかたを工夫するのが面白かったが、効率的な方法を進言しても上司には「いいから決められた通りやれよ」とバッサリ。組織で働くということが高圧的で理不尽なものだと思い込み、ほどなくしてやめた。この時の感覚が、後に中村さんの進路決定に影響する。
上京し、夜間の機械工学部に通い始めてからも、周りに流される生き方は変わらず、同郷の仲間たちと送る怠惰な毎日。バイトもせず、早々に授業を離脱した中村さんの学生生活は、刺激的ではあったがどこか荒んでいた。