ヤマトホールディングス会長 
瀬戸 薫 

1970年、中央大学卒業後、大和運輸入社。82年大和運輸はヤマト運輸に改称。2004年常務。05年ヤマト運輸はヤマトホールディングスに移行。06年社長、11年会長。

「受け手の満足こそが重要」と各種のサービスを開発した宅急便は常に市場をリードした。瀬戸によれば、「クール宅急便の温度帯に膨大な投資が必要な冷凍を加えたのも、受け手が一番おいしく食べられるようにするためだった」という。

江頭もYPCに移る前、事業開発に携わりながら、物流の買い手と売り手、双方の立場で考えることを心がけた。その目線で1次サプライヤーを訪ね歩いた結果、買い手側の深刻な困りごとを知る。

「彼らが最も苦労していたのは、2次サプライヤーからの調達でした。1次サプライヤーには大手みたいに自前の電子発注システムを持つほどの力はない。多くの人手を使い、必要品目を国内やアジアの多くの2次サプライヤーに電話やメール、FAXで発注し、納品されたら消し込みをする。効率化からとり残された人海戦術の世界でした。納期は必ずしも守られるわけではないので余分な在庫を抱える。遅れを自分たちの製品出荷に航空便を使ってカバーしたりと、ものすごくコストがかかっていたのです」

江頭は買い手と売り手の間にヤマトが入って解決する仕組みをつくり上げた。まず買い手側の1次サプライヤーは、ヤマトが開発したクラウド型の情報システムに必要品目や納期などを入力し、発注する。売り手側の2次サプライヤーは発注情報をウェブ上で見て、部品を用意する。その部品をヤマトのSDが発注情報に基づき国内外の現地に引き取りにいく。代金の立て替えも可能だ。ヤマトは預かった荷物の通関手続きを行い、買い手に届け、立て替え代金を回収する。

引き取り方式なので納期は守られる。売り手も配送管理コストが省ける。必要な品目が必要なときに必要な量だけ納品され、ジャストインタイムの調達が可能になる。このとき、単なるモノの授受から、売り手も買い手もともに製品づくりに関わる共創の関係が生まれる。