「世のため人のため」を全社に
ある大手食品卸はこの決済サービスを活用して、小規模小売事業者向けの会員制ネット通販を始めた。結果、山間部や離島などの従来取引のなかった業者にも商品を供給するようになった。業績も好調だという。また、大手食品メーカーは遠隔地への自社配送を効率化したかったが、地方小売店は毎日の配送を望んだ。利害相反がこの決済サービスと宅急便による納品で一気に解決された。
「大手は配送コストが削減される分、営業に専念できる。小売店は商品が毎日届く。買いたいけれど買えない仕入れ困難者のお役に立つことができるのです」
と、樫本はいう。宣伝パンフレットの謳い文句はずばり、「貴社のお困りごとを解決します」。08年からテストを始め、現在会員は1万4000社。2012年から本格的にスタートし、今後5年間で10倍の14万社に増やす計画だ。その推進役として、都市銀行支店長職から金融の知識を買われ、移ったのが樫本だ。
「仮に世の中に強い立場と弱い立場があるとすれば、ヤマトは常に弱い立場のほうに目を向ける会社」
移って1年の元銀行マンの目にはそう映るという。確かに宅急便も、受け手は「待つ側」の「弱い立場」であり、各種のサービスはクール宅急便にしろ、配達時間帯指定にしろ、受け手を起点にして発想され、進化を続けてきた。会長の瀬戸は毎週、早朝に現場を回り、作業に無駄がないかチェックするが、これも「少しでも早く受け手にお届けするにはどうすればいいか」を考えさせるためだ。