ヤマトホールディングス社長 
木川 眞 

1973年、富士銀行入行。2004年みずほコーポレート銀行常務取締役。05年ヤマト運輸入社、常務取締役。11年ヤマトホールディングス社長、兼ヤマト運輸会長。

「すでに日本企業はコスト削減のため、限界まで製造原価を引き下げ、製造工程の工夫を重ねてきました。いよいよ最後に刈り取る原資は、これまで手がつけられなかった物流です。大企業は自力で効率化が図れますが、日本経済を下支えする中堅中小企業には支援が必要です。

そのときヤマトに何ができるか。国内の宅急便は今、配送の当日化を進めています。アジアでは日本との間で翌日配達が可能な範囲が広がりつつあります。さらにヤマトグループには、宅急便の運営で培った情報システム、決済のファイナンス、荷物管理のロジスティクスのテクノロジーがある。これらのIT、FT、LTで高度化された日本とアジアを結ぶラストワンマイルまでの一気通貫のサービスは他社にはまねできません。

このプラットフォームを物流版のクラウドサービスのように提供し、企業には自分たちの強みに集中してもらう。それが、ヤマトの目指すアジア・ナンバーワンの流通・生活支援ソリューションプロバイダーのあり方です」

荷物が動けば、お金も動く。ヤマトは決済面でも国内産業を支援する仕組みを用意していた。例えば、メーカーや卸などの売り手は販路を拡大したいが、代金未回収リスクは避けたい。一方、小規模小売事業者などの買い手は仕入れ先を拡大し、少量多品種で品揃えを充実させたいが信用力がなく、掛け取引ができない。

間に入って信用供与を行い、買い手の支払いを保証し、売り手の売掛金未回収リスクを補完する。それがヤマトクレジットファイナンス(以下、YCF)の「クロネコあんしん決済サービス」だ。売り手に保証料を払って加盟店になってもらい、買い手は会員になれば加盟店と取引できる。社長の樫本敦司が背景を話す。

「われわれが目を向けたのは、仕入れ困難者です。例えば、地方の小規模小売事業者は少量ずつ仕入れたい。一方、売り手の大手は小分けで売るのは得意でない。そこにわれわれのサービスが間に入れば、店には宅急便で商品が届き、掛け払いができます。地方の商店街のアパレル店なども、いいものを少しずつ置き、品揃えを充実させることができます」