では、そんな時代に求められる人材像とはどのようなものなのか――。三菱総研経営コンサルティング本部人材・組織戦略グループリーダーの瀬川秀俊主席研究員は、個人としてのアイデンティティ(個性や価値観)が明確な人間だと断言する。
「大リーグで活躍を続けるイチローの魅力は、高打率と俊足を生かした盗塁、そして華麗な守備を含めたパフォーマンスの高さにある。しかし、米国のファンを魅了する本当の秘密は、パワー勝負のメジャーでは珍しい、日本の忍者をイメージさせるような個性的なプレースタイルにあるのだろう。同じことがこれからのビジネスマンにも当てはまる。価値観の異なる国で認められるには、パフォーマンスの高さだけではなく、個性や価値観が問われるようになる」
今後も勝ち残っていく会社は、世界各地に生産・販売拠点を展開するグローバル企業になるだろう。そこでの企業存続の鍵の1つは、国内外でいかに優秀な人材を確保していくかにかかっている。今後の雇用環境の変化についてニッセイの矢嶋氏は「勤労と引退の垣根が低くなる」と見ている。
要は、優秀な社員は自分が働きたい職場で、自分が希望するまで働くようになるということだ。社員が働きがいを感じ、仕事に誇りを持てる職場でないと優秀な人材を引き留めることは難しい時代になっていく。とくに少子高齢化の進む日本国内は、その傾向がより強くなるはずだ。それだけに経営トップの責務は一層重くなる。
たとえ厳しい未来像が示されたとしても、悲嘆に暮れる必要はない。未来を塗り替える知恵を人類は持っているからだ。自分たちの子や孫のために明るい未来地図へ描き直す努力を続けることこそ、いまを生きるわれわれの使命なのではないだろうか。
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