ユーロに目を転じると、欧州債務問題は長期化が予想されるが、12年は歴史的な年として振り返られるかもしれない。その一端が、欧州中央銀行のもとに行う域内の銀行監督一元化の動きで、武田さんは次のように解説する。
「アジア、米国とのパワー・オブ・バランスの観点から、ユーロの経済を支えるドイツとフランスは『世界経済の三極の一角を維持する必要がある』と考えるだろう。銀行監督一元化や財政の統合深化で経済が安定化するメリットも大きく、今後20年間は統合がより緊密化していくはずだ」
一方、日本の将来はかなり厳しく、30年頃には経済成長がゼロないしはマイナスへ落ち込むと予測されている。とはいえ、アメリカ、中国に次ぐ経済大国であることは間違いない。その立ち位置を武器にしてビジネスを展開していくことが求められる。
「欧米のような成熟社会には、付加価値の高いハイブリッドカーなどクオリティ優先のビジネスで利益を稼ぐ。逆にアジアでは多少付加価値が低くても取引量を確保しながら生活の質を向上させる、コンビニや介護などのビジネスが有望になるだろう」とニッセイ基礎研究所経済調査部門チーフエコノミストの矢嶋康次氏は語る。
だが、注意が必要なのが“チャイナリスク”だ。中国は(1)急成長期の過剰投資、(2)頭打ちの国内消費、(3)深刻化する格差問題と社会不安、(4)急激な高齢化、という4つのアキレス腱を抱えている。こうした問題を解決できずに経済成長が急失速すると、日本も近未来の戦略構想の見直しが迫られる。
そこで揺るぎない成長を果たしていくうえでのポイントになるのが、さまざまな産業や技術分野で画期的なイノベーションを巻き起こすことだ。三菱総研では、そうしたイノベーションによって“創造型需要”を喚起することの重要性を説いてきた。同社人間・生活研究本部本部長の亀井信一主席研究員は「一例として生物のメカニズムを学び、真似ることで、新しいブレークスルーが可能になっていく」と話す。