経済や行政の分野で30代リーダーが目立ち始めている。運命論者で行動主義者。そして、国の先行きに強い危機意識を持っている。彼らは日本の将来をどう見ているのか。
なぜ君は国を憂うのか?
「岩瀬さんのような輝かしい経歴を持つ人が、なぜ『日本』を心配するのかそれがわからない。僕は祖国として日本を愛しているけど、国家は別だ。嫌になったら出ていきますよ」
雪の青森。若手の経営者・政治家ら200人が集まる「G1サミット」のオープニング・セッションに登場した多摩大学名誉学長の野田一夫が、いかにも野田らしい語り口で対談相手の岩瀬大輔を挑発した。
国家財政の破綻が近づいている。ある試算によれは、2020年までに日本の国債は暴落し財政破綻に至る確率が高いという。野田が皮肉を述べる直前、岩瀬は「時代遅れになっている年金などのシステムを時代に見合ったものに切り替えなければならない」と力説していた。財政破綻を回避し、国の姿を守りたいという素朴な願いが岩瀬の弁舌からは感じ取れた。
だが、野田のいうとおり、36歳の岩瀬は世界中に人脈を持つ新世代のエリートだ。戦後初の独立系生保であるライフネット生命の立ち上げに参画し、いまは副社長の重責を担うが、実のところ世界中のどんな経済圏でもエグゼクティブとして迎えられるプラチナチケットの持ち主である。
そんな人材を、戦後歴代の「いいかげんな指導者」が積み残してきた政治の難問に直面させるのは不当だし、端的にいってもったいない。野田が皮肉な物言いをした真意はそこにある。