姿勢の維持は脳が行ってくれている

実は、この原因は私たちが姿勢を保つシステムそのものに隠されています。

姿勢を維持するためには、神経からの指令が必要です。しかし、神経の仕組みを詳しく見てみると、姿勢を司る経路は、意識的なコントロールとは別の場所に存在していることが分かります。つまり、私たちは無意識のうちに姿勢をとっているのです。

例えば、目の前にあるコップに手を伸ばす時を考えてみましょう。脳は「手を動かす」という意識的な指令と同時に、「姿勢を保つ」という無意識的な指令も出しています。

意識的な動作の指令は、脳の「運動野」という場所から出されます。

一方、姿勢の維持は、意識しなくても脳が行ってくれます。これは、脳幹を中心とした神経ネットワークが、体の様々な部分からの情報を受け取って、自動的に筋肉を調整しているおかげです。

脳幹は脳と脊髄の接続部分にあり、呼吸や心臓の動きなど、生命維持に必要な機能をコントロールする場所です。

姿勢の維持も、脳幹の大切な役割の一つです。脳幹は、耳の奥にある平衡感覚器や、全身の筋肉や関節にあるセンサーからの情報、そして目からの視覚情報を統合して、常に最適な姿勢を保つように全身の筋肉に指令を送っています。

立ったり歩いたりする時、あなたは姿勢を意識していますか。答えは「NO」でしょう。

私たちは意識することなく、自然と姿勢を保つことができるようになっているのです。高いものを取ろうとすると自然と背筋が伸び、低いものを取ろうとすると背中が自然と曲がる。

姿勢とは、まさに無意識のうちに起こる体の動きなのです。だからこそ、姿勢を良くしたいと意識するのではなく、姿勢に必要な体の構造や機能を高めることが重要なのです。

前置きが長くなりましたが、実際に無意識のセンサーをよみがえらせることで、猫背を改善するためのエクササイズをご紹介していきます。前回の記事と同様に、本来の機能を高めるための方法になります。