「利益が出すぎて、困っています」
1億円といっても資産ではない。年収である。勤め人には想像の外だ。うっかり自分の年収で割ってしまうと、間違いなくがっくりする金額である。
わずか1年で1億円かそれに近い大金を稼ぎ出す人たちは、どんな稼業に就き、どんな具合にお金の出入りを管理しているのだろうか。
田崎正巳さん(仮名、43歳)は、数年前に日本からシンガポールに移住したIT企業社長。移住したのは、日本国内でのビジネスが頭打ちであることと、節税のメリットがその理由だ。
「年収が急上昇して3000万~4000万円を超えたときも、1000万~2000万円の頃と生活は何も変わらなかった。ただ、2000万円に達した頃から、経費とはいえいいものを食べられるようになったなあ、という実感はありました」
ただ、3000万円を超えてからは、経費でも自腹でもどっちでもいいか……という心境に変わったという。
毎月、本人名義の口座に約600万円が振り込まれ、そこから貯蓄・運用資金の口座に約500万円、約100万円が生活費の口座に振り分けられる(図表)。
「節税のために会社で購入した3LDK、130平方メートルのコンドミニアムの家賃が7000ドル(約56万円)。一見高いですが、日本で払っていた税金が家賃に替わっているだけ。ほかに移動用のタクシー代が10万円、食費は高価格の明治屋で購入するので約10万円。日本にいた頃の小遣い8万円が、丸々子供の通う幼稚園の費用約10万円に振り向けられ、今はゼロ(苦笑)」
そんな田崎氏の少年時代は、「朝食を食べたことがなかった」という困窮生活。高卒後、工場勤務などを経て上京、月収6万~7万円でSEに。30歳で一時月収300万円に達し、「ポケットに札束突っ込んで、キャバクラで豪遊していた」というが、「こんないい状態は続かない」との危機感から、後の夫人とともに貯めていた結婚資金800万円を無断ではたいて、欧州へ語学留学に赴いた。