速水健朗(はやみず・けんろう) 1973年、石川県生まれ。編集者・フリーライター。専門分野は、メディア論、都市論、ショッピングモール研究、団地研究など。『タイアップの歌謡史』『自分探しが止まらない』『ケータイ小説的。』『ラーメンと愛国』など著書多数。ツイッターアカウントは、@gotanda6

ここ十数年で東京の街はどう変わったか? 巨大な再開発事業の陰で見落とされがちだが、実は各地にできたコインパーキングが、風景の変化の大きな要因になっている。また、近年では病院や役所のフロアにスターバックスなどのカフェが出店し、空港や駅の構内の商業施設が拡大するなど、公共スペースが消費の場所として変化している。その指摘から始まり、「現代の都市空間がショッピングモール化している」という論考を繰り広げるのが、新刊『都市と消費とディズニーの夢』だ。著者の速水健朗さんはこう語る。

「ショッピングモールをテーマにした論考は郊外論と思われがちですが、この本はそうではない。都市論です。今の都市は市場原理によって変化している。羽田空港や東京駅のような公共の場も、消費のために最適化されている。それを『ショッピングモーライゼーション』という造語で定義した。それが、この本の1番のメッセージです」

2010年新設の羽田空港の新国際線ターミナルには、江戸の街並みを模した飲食店が並ぶ商業施設が併設される。その特徴を速水氏はこう指摘する。

「羽田空港は、3つのターミナルの商業施設が、それぞれ時代にあわせた違う表情を見せています。第1ターミナルは高級百貨店、第2ターミナルはショッピングモール、そして最も新しい国際ターミナルはテーマパーク性を持った施設になっている。最新のショッピングモールがテーマパークと結びついたものになっている、というのがこの本のもう1つの主題です」

ショッピングモールを考えることが、観光都市化しつつあり、国際的な都市間競争のさなかにある東京の未来を考えることに繋がる。それが本書の主張だ。

「都市を語る時に、住む側の論理で考えることは多い。しかし、海外から東京に来る人たちが求めているものは、我々の感覚とは全く違う。特に観光産業が巨大化していくこの先は、外からの目線を内面化することが必要になってくるでしょう」

(佐藤 類=撮影)
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