夫婦別財布を、共有財布に切り替えようとするも…
福井タカシさん(49歳)・ミヨコさん(46歳)夫婦は結婚以来、正社員の共働き。2人の子どもが生まれて今に至るまで、完全別財布のまま10年間過ごしてきました。月収はそれぞれ手取りで30万円あり、世帯収支では毎月約7万円の黒字が出ていたため、貯金を始め、スマホや生命保険の契約内容、支出の内訳まで開示する必要に迫られなかったのです。
しかし、2年前に転機が起こります。ミヨコさんが体調を崩し、仕ったのです。月収が30万円から0円になったにもかかわらず、個人で契約している保険やスマホなどの支払い月約5万円、さらには2人の子ども(事と家庭の両立に悩んでいたこともあり、正社員の仕事を退職して専業主婦にな7歳、6歳)のために買う日用品や食費、ガソリン代などの変動費約8万円。計十数万円を自分の貯金から取り崩すことになりました。
なぜ、夫のタカシさんに頼ることができなかったのでしょうか。初回相談の前、夫不在時に電話してくれたミヨコさんは、こう話してくれました。
「実は、夫は私の退職にいい顔をしていなかったんです。退職を考えていると打ち明けた時、『仕事を辞めて、やっていけるの? 貯金とか大丈夫なの? 一定期間休むのはいいけど、復職は検討してほしいな』といったことを遠まわしに言われて……」(ミヨコさん)
夫の意向に反して退職した心苦しさから、「財布の共有化」を提案するのは憚られたと言います。ミヨコさんは、会社員時代に貯めてきた貯金が300万円、退職金700万円のほか失業手当も振り込まれる予定のため、貯金から自分の支出をカバーしたほうが波風は立たず、平穏でいられると思ったのでしょう。
「でも、主婦になって退職金や失業手当が入るまでの2カ月は、とても心細かったです。当時は蓄えが貯金の300万円しかなかったのに、月10万円以上自分の口座から減っていくわけですから。不安を口にしても、夫は『貯金が減ることを気にするなら働いてほしい』と言うだけで、何の頼りにもなりません」(ミヨコさん)
結局、ミヨコさんは何とか体調を整え、一年後にパート社員として復職しましたが、会社員時代と比べて収入は半減し、ボーナスもナシ。このままではミヨコさんの貯金はますます減ってしまいます。さらに怖いのは、夫の貯金残高が不明なこと。「貯蓄性保険で貯めている」と言うけれど、全体でだいたいどれくらいの額かは教えてくれません。
「ここで一度、ひざを突き合わせて夫と話し合うべきだとは思うんですが、夫は取り付く島もないので、第三者に入ってもらいたいと思いました」と、初回相談に夫を連れて来られました。
このように一度夫婦別財布にしてしまったら、その後、家計急変に見舞われても別財布システムを変えられないというケースは少なくありません。しかし、客観的な立場からすると、奥さまの体調不良や家計のことは、家族全体の問題でもあります。したがって、夫婦が同じように稼げなくなったことは「家族の課題」と捉えて相談するのが筋でしょう。とはいえ、価値観は人それぞれ。自分の考えを押し付けるわけにはいきません。