子どもを「人質」に、親もコントロール下

教授たちに迎合することで無事に面接を突破した受験生たちが医学部生となり、やがては教授たちの思惑通り「共感脳」だけがやたらと高くて周りに合わせられる医者として育っていきます。

これでは古い常識がいつまでもまかり通り、進歩もしないし、変革も起こらないのは当たり前でしょう。

すべての医学部の入試に面接を課すことは、自分の子どもを医学部に入れたいと考える多くの医者の口を封じるうえでも有効です。

何せ入試の面接官は医学部の教授が務めるわけですから、彼らの機嫌を損ねるようなことをするのは、とても勇気のいることなのです。

親が今の医療や大学病院、あるいは医学部のあり方に異を唱えることが、子どもの医学部の合否に影響するなんて、そんな理不尽なことはあるはずないと考えるかもしれません。

でも、やろうと思えばそれが簡単にできてしまうのが入試面接というシステムの危うさなのです。

「和田秀樹の娘」だから合格できなかった?

はっきりと数字として結果が出る学力テストの得点を操作すれば東京医科大学で起こった裏口入学事件のように不正がバレるリスクはありますが、面接なら「医者としての適性がない」という「正当な」理由をつけられます。

実際にそのようなケースがあったかどうかは別として、我が子を自分と同じように医学の道に進ませたいと考える親にとっては、その可能性があるというだけでも十分な脅威です。

これはもう子どもを人質にした恐ろしい言論封殺システムだと言ってもよいのではないでしょうか。

和田秀樹『ヤバい医者のつくられ方』(扶桑社新書)
和田秀樹『ヤバい医者のつくられ方』(扶桑社新書)

会って話をしてみると、「大学病院での臓器別診療は問題だらけだ」というふうに、私と同じような考えを持つ医者も実は多いのだなと感じるのですが、それを公の場で口にしようとする人がなかなかいないのは、この無言の圧力がうまく働いているせいかもしれません。

私の娘は、2018年に東京大学を卒業後に医者になりたいと考えるようになり、複数の医学部を受験しましたが、1校(そこがいちばん偏差値が高く、その学校では上位5番以内の特待生になりました)を除いてすべて補欠の扱いでした。

実はあれも、年齢や性別による差別というより、先述した通りこうやって今の医療界に蔓延る問題に声を上げることを決してやめない和田秀樹の娘であることを面接官の誰かが知っていて、それが理由になった可能性もあるのではないかと私は疑っています。

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