中国が突然、領有権を主張してきた事情

中国との間にも尖閣諸島の問題を抱えている。尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかだ。現に日本はここを有効に支配している。

1895年の尖閣諸島の日本領への編入から1970年代まで、中国は日本による尖閣諸島への有効な支配に対して一切の異議を唱えてこなかった。しかもこの間、中国共産党の機関紙や中国の地図の中でも、尖閣諸島は日本の領土として扱われてきた。にもかかわらず、中国はいまさら領有権を主張しているのだ。

昔もいまも中国は太平洋へ進出しようとしている。西欧列強による半植民地時代、日清戦争、辛亥革命、第1次世界大戦、第2次世界大戦などを経るうちに、中国の統治者には「内陸から海洋に打って出よう」という大きな意識変革が起こった。かつての英国や現在の米国と同様、海の支配を経て覇権国家になろうとしているのだ。

そうした習近平の野心を実現するためには、南シナ海に続き、東シナ海も支配下に置かなければならない。つまり、次に狙われるのは台湾と日本の海域であり、尖閣諸島がそのターゲットとなる。

中国沿岸警備隊の船
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尖閣諸島は日本にとって必要不可欠

もっとも、尖閣諸島については、広大な領土を持つ中国が、あの小さな島々そのものを領土として欲しているわけではない。中国の海洋進出において、尖閣周辺の制海権や制空権が軍事的に必要なのは当然だが、加えて海域に眠る膨大な天然資源も目当てなのだ。尖閣諸島の領有問題が浮上したのも、天然資源の存在が指摘されてからだった。

尖閣諸島の経済的価値は不明確だが、天然資源が乏しい日本にとってこの問題の早急な解決は必要不可欠だ。

とはいえ、中国は国連安保理の常任理事国である。仮に尖閣諸島で何か問題が起こっても、国連は中国の拒否権によって何の力も発揮できないだろう。中国が拒否権を行使すれば、尖閣問題はそこで終わる。