不法占拠の誘因を与えてはいけない
さらに尖閣諸島は無人島だ。中国の巨大な人口が一気に押し寄せたら、占領を防ぐことは難しい。フィリピンへの対応をみても、中国がこのような暴挙に出る可能性は高い。
こうした動きに対するカギとなるのは、台湾のトップである総統に誰がなるかだ。台湾の自治権を主張する民主進歩党の党首(現在は頼清徳)が総統のうちは、米国、台湾、日本の協力が引き続き機能し、中国も簡単には手を出せないだろう。しかし、対立候補である国民党の党首が総統になるようなことがあれば、状況は不透明になる。
では、日本が領土を守るためになすべきことは何か。日本の対応としては、少しの隙も見せないことで他国に有利な状況を作らせないことが第一に求められている。もし他国から占拠される事態になった場合、その何倍もの反撃をするという姿勢は堅持し、不法占拠の誘因を与えないことが重要だ。
領土問題でアメリカは頼りにできない
尖閣諸島が日米安保条約の対象になるかどうかは、しばしば議論の対象となる。米政府も公言しているように、尖閣諸島は当然に条約の対象だが、米国が実際に守ってくれるかどうかは別問題だ。日米間には、現行の安保条約の前身である旧安保条約が存在する。これは1951年9月に署名され、1952年4月に発効した条約だ。
その条約には、外国による武力侵攻に対する米軍の支援が規定されていたが、韓国による竹島占領があっても米国の対抗措置はとられなかった。また、ソ連は北方四島のうち色丹島と歯舞群島の引き渡しを拒否したが、米国の対抗措置は同様になかった。
竹島、色丹島や歯舞群島において日本側に施政権がなかったことも影響したが、自国で領土を守らなければ、施政権を行使していない、すなわち権利を放棄しているとみなされる。それが冷酷な国際社会のルールだといえる。
現在の日米安保条約でも「日本国の施政の下にある領域」(第5条)が対象となっている。そのため、まずは日本が自ら守らなければ施政権外と見なされる可能性があるのだ。