成熟しないから、成長できる
そんな彼の周りには、同じ関心を持つ仲間たちがいつも集まってきます。彼はいろんなことに詳しいので、集まる人たちもいろいろです。でもどうしたわけか、彼は女性にモテない。少しは女の子にモテようとお洒落を試みたこともあったのですが、あまり成果はなかったようです。しかし、一部の女性には密かに人気があったりして、彼の周りに集う人たちの中にも、最近は女子をちらほら見かけられるようになりました。
また、「カワリモノ」の彼は、誰でも分け隔てなく受け入れます。彼ほど度量が大きい者を私は知りません。彼の周りに集まる人たちの中には、学校や会社や家庭で居場所のない者、つまはじきにされる者、疎外される者もいます。それらの人たちも何ひとつ区別することなく受け入れ、ともに好きなことを楽しみ、生きる喜びと安心感を与えてくれます。
さらにもうひとつ、忘れてはならない「カワリモノ」秋葉原の最大の魅力ともいえる、尋常でない特質があります。
秋葉原が持つもうひとつの特徴は、その変わり身の早さです。単なる新しい環境への適応ではなく、自ら生み出した新しい価値観や手法をこれまでの伝統の上に積み重ね、新たな秋葉原の姿へと変身してきたのです。秋葉原は、戦争直後に電子部品を売る小さな店舗が集まり、経済成長で豊かになり始めると家庭向けの家電製品を売る店舗が生まれました。余裕が出てきて趣味を楽しめるようになると、オーディオや高級家電、個人向け電化製品が目立つようになり、パソコン、アニメやゲームなどのコンテンツ商品やサービスの店舗が増えました。今や年間売上高が40兆円以上と言われる秋葉原は、日本の消費文化や生活スタイルの動向を絶えず先取りし、時代の先頭を走り続けてきました。
街は生き物です。誕生し、成長し、成熟し、衰退し、生まれ変わる。ところが、秋葉原には、いつまでも成熟というものがないように思えます。いつまでも「こども」なのかも知れません。「こども」だからこそ、いろんなことに興味を持ち、いろんな人を受け入れられる「カワリモノ」であり続け、大人たちが不安に感じる時代の変化もチャンスだと捉えて素早く変身し成長し続けるのです。
今、私たちの手本となるのは、秋葉原のような街だと感じています。秋葉原には、これからの時代を生きるヒントがたくさんあるのです。この連載では、「カワリモノ」秋葉原で見つけたさまざまなヒントを伝えたいと目論んでいます。いろんな人が集まり、いろんな活動がある秋葉原の実態を紹介しながら、そこから普段の生活に活かせる成長の種を届けたいと思います。
(次回のお題は「福袋」。3月26日[火]更新予定)