「中国が毒を持ち込んできた」とタイ世論が沸騰

農薬が混入していた中国産シャインマスカットが東南アジアを騒がしている。現地有力メディアのバンコクポストなどが報じた。

Bangkok Post「Alarm raised about contaminated grapes」(2024/10/25)
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シャインマスカット
写真=iStock.com/masa44
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タイから始まったこの問題はインドネシアにも波及し、現地の消費者のシャインマスカット離れを加速している。この中国産シャインマスカットの一部は「日本産」と銘打たれているものもあり、日本ブランドを損なう恐れがある。

「農薬漬けのブドウなんて二度と食うか」――。

こうした声が先月来、タイ全土で高まり、現地では本来高級品のはずのシャインマスカットが叩き売られているという。

シャインマスカットは種無しブドウの高級品として知られている。先月末、タイの市民団体である農薬警報ネットワーク(Thai-PAN)が、バンコクと近隣地域で発売されている中国産と原産地不明のシャインマスカットのサンプルから基準値を超える残留農薬が検出されたと発表した。すべてのサンプルに農薬が残留し、ほぼすべてが基準値を超えていたという。

このニュースにより、タイのSNS上では「中国が毒をタイに持ち込んできた」など世論が沸騰。タイ政府当局は農薬の残留が確認された中国から輸入されたシャインマスカットについて、検出された農薬は安全基準内で洗浄すれば問題ないと危険性を否定した。

インドネシアにも波及、国会でも物議を醸す

ただ、当局が紹介した洗浄の方法が、「食べる前に重曹水または水に15分間浸し、その後、流水で30秒すすぐ」というものだったため、「そんなことまでしないと食べられないほど危険なのか」とさらに世論を煽ることになった。

一部では「中国の機嫌を損ねたくないから、忖度してるんだろう」と中国への忖度を指摘する声も出るなど、シャインマスカットをめぐりナショナリズムが高まる結果となっている。

タイのこの騒ぎは瞬く間に東南アジアで広まり、インドネシアの消費者も敏感に反応した。このため、国会でも議題として取り上げられ、監督官庁に早急に調査を進めるように指示が出された。

これを受けて、インドネシア医薬品食品監督庁(BPOM)などがジャカルタなど主要都市の状況を調査した結果、国内で流通しているシャインマスカットに安全性の問題はなかったと発表した。

ただ、消費者の不信感は拭いがたく、SNS上では「こんな調査結果、信じられるか」「中国への配慮が透けて見える」といったネガティブな反応が溢れた。実際、筆者のインドネシア人の20代知人女性によると「これまでシャインマスカットを食べてきたけど二度と食べない」と決めたという。こうした消費者は少なくないと見られる。