「個別事案の責任は負わない」は許されない
批判を受けてメルカリ側が補償を行ったことは「対応を改善した」と言えるのだが、出品者も納得はできていないし、多く人が「手のひら返し」と受け取っている。事ここに至って求められているのは、個別事案の対応ではなく、顧客との向き合い方の改善であり、不正行為への厳格な対応であるから、それで沈静化しないのも当然と言えば当然である。
同様のことは他のプラットフォーム事業者でも起こっている。闇バイトの募集が多数掲載されている疑惑が浮上したスキマバイトサービスの「タイミー」にも、掲載前のチェックを怠っているという激しい批判が巻き起こった。また、著名人になりすましたSNS偽広告による投資詐欺に関し、FacebookやInstagramを運営するメタ社が集団提訴されるという事態も起きている。
プラットフォーム企業の利用者の管理や利用者間のトラブル対応の甘さが相次いで露呈しているが、それに対して十分な対応が講じられているとは言いがたいのが現状だ。
メルカリ同様、詐欺行為が横行する中で、「自分たちは仲介しているだけだから、利用者間の取引には責任を負わない」という態度は許容しがたい。
「コメントは差し控える」という誤った回答
メディアからの取材対応は、広報部門における重要な仕事だ。取材依頼を断ったり、質問への回答を控えたりするほうが適切な場合もあるが、今回「コメントは差し控える」という回答をしたことが適切であったかは疑問だ。
コメントができない場合も、「プライバシーの保護のため」「事実関係が明らかではないため」といった理由が示されているのであれば、多少なりとも納得できるのが、そうでないと「何か隠しているのではないか?」という疑いを持たれかねない。個別案件についてはさておき、「対応方針」についてもコメントを控えるというのは、さすがに不誠実という印象を与えてもやむを得ないだろう。
事実関係が明らかになっていない、あるいは公表できないとしても、「現在、調査中です」「事実関係が明らかになり次第公表します」「(当事者とは)現在個別にやり取りを行っております」といった程度のことは言えるはずだ。
さらに、具体的な対策は現段階で言えないとしても「再発防止策を講じる」「被害を受けた方には補償を検討する」といった意思表明はできたように思う。そうすれば、炎上は多少なりとも収まったのではないかと思う。
メディアの批判は、報道に先んじて間違ったことは謝罪をし、対応策を発表することで、封じることができる。実際、国民民主党・玉木雄一郎代表は不倫報道を受けた直後に記者会見を行い、事実を認めて謝罪をしたため、批判を最小限に抑えることに成功している。