収入は社会貢献をするNPOに寄付、お金より時間がほしい

講演などの仕事が増え続け、お金が貯まっていく一方、多忙でそれを使っている暇がなく、40代からの趣味である海外旅行にもなかなか行けないのが現状だ。

「自分で使わないお金は、NPOなど、いつも資金が足りなくて困っているところに寄付し、使っていただいています。私が今ほしいのは、時間。午後になると眠くなるんですね。夜は11時頃に寝て朝は5時とかに起きているけど、寝足りないわよ」

若宮さんの原動力は好奇心だが、やりたいこと、興味のあることは90歳間近となった今も増えるばかり。1日24時間、1年365日では足りない時間を目いっぱい使いつつ、自分で使う暇のないお金を寄付する。それは、自身と同じように明確に「やりたいこと」を持つ誰かを応援する思いであり、社会貢献なのだろう。

そんな若宮さんの講演に訪れるのは、50~70代が中心だが、なかには若い男性などもいると言う。「人生100年時代」が現実となり、深刻な少子高齢化で、経済も社会も上向く気配が見えない今は、若者が夢を持ちにくい時代と言われる。

89歳の現役プログラマー・若宮正子さん
撮影=阿部岳人
89歳の現役プログラマー・若宮正子さん

一番大切なのは「自分の頭で考えること、自立すること」

そんな中、80代から世界に羽ばたいていった若宮さんに若者が憧れ、話を聞いてみたいと思うこと自体、希望を感じられる話かもしれない。そうした講演の中で、一番大切なこととして若宮さんが挙げるのは「自分の頭で考えること、自立すること」だ。

「特に脳みそが自立していることが一番大事だと思うんですよ。今の世の中、振り込め詐欺とか、高齢者を狙った犯罪も多いですよね。でも、自分の頭で考えたら、明らかにおかしいじゃないですか。どうしてそんなおかしいことに気がつかないの? と思うんです。自立して、自分の頭で考えて、自分で行動する。人に引きずられないことが大切です」

中高年には「孤独」への不安を訴える人も多い。そうした中高年に対し、若宮さんは地域ボランティアなどを勧めている。

「高齢の人に何かをやってあげると、ありがとうと言いますよね。でも、高齢の人は、本当は自分が『ありがとう』と言われたいんです。だから、若い人は、できれば高齢の人がありがとうと言われる場を作ってあげてください。例えば老人ホームなどで、手間暇かけた手作りのものを作っているスキルの高い人がいます。でも、たいていつまらない顔をして作っているんですよ。だったら、それを例えばバザーなどで売って、そのお金を子ども食堂に寄付などしたら、ありがとうと言われるし、気分が全然違ってくるはず」