3回にわたるがん治療で一番うれしい出来事

この吉報に家族で大喜びしました。移植治療で一番大きな目標が生着です。仮に生着がうまくいかなければ生着不全で移植は失敗です。だから移植患者にとって無事に生着するかどうかは一番の心配事なのです。

苦しい移植治療を乗り越えてついに到達した生着という目標。それを幸運にも家族に祝ってもらえたこと。この日の生着は、それまでのがん治療の中でも一番うれしい出来事でした。この日のことは一生忘れません。

生着の話がいち段落した後、先生から今後の話を聞きました。

「高山さんの病気は2つの予後不良因子があり、手強い白血病です。これからまたGVHDの山が来ます。皮膚の症状は治まってきていますが、胃腸の症状はこれからも出ると思われます」

このように聞いて、改めて気を引き締めました。さらに先生の話は続きます。

「白血球が1000を超えたので、カビや細菌の感染リスクは大きく下がりました。敗血症のリスクもほぼなくなったと考えていいでしょう。

本格的な闘病はまさにこれからだが…

しかし、ウイルス感染のリスクはあります。肝臓や脳炎の合併症については移植後45〜90日の間はリスクがあります。だから少なくとも5月いっぱいは注意が必要です。肺炎にも注意必要です。肺の組織はダメージを受けてしまうと再生しないため、念のため、症状がなくてもレントゲンなどの検査をしながら注視していきます」

高山知朗『5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割』(幻冬舎)
高山知朗『5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割』(幻冬舎)

この一連の説明を聞いて、生着したことは治癒に向けた大きな一歩であるものの、GVHDとの本格的な戦いはこれからで、合併症のリスクもまだあると改めて覚悟しました。

まだまだ安心はできないと思う一方で、今後何が起きても、これまでと同じように、先生に自分の症状をきちんと説明して適切な対応をとっていけば、もはやどんな苦難も乗り越えていけると思えるようになっていました。

この日の夕飯は、妻にお願いして買ってきてもらった築地銀だこのたこ焼きです。久しぶりにおいしく食べられた、46歳の誕生日の夜でした。

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