睡眠不調には、眠れない「不眠症」と睡眠が足りていない「睡眠不足」がある。上級睡眠健康指導士の角谷リョウさんは「日本人ならではの体質や生活環境が睡眠不調につながることがある。たとえば、日本は諸外国に比べて照明が明るく、『睡眠ホルモン』の分泌を妨げている」という――。

※本稿は、角谷リョウ『超熟睡トレーニング』(Gakken)の一部を再編集したものです。

モダンベッドルーム
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日本人は遺伝的に精神不安定になりがち

睡眠不調はさまざまな原因で起こります。その中には、日本人特有の体質や、日本で暮らしているだけで起きてしまうものもあります。日本人が特に睡眠に悪いことをしている意識がなくても、起きてしまうのです。

その代表的な原因として、以下の7つを見ていきましょう。

【1】日本人は不安遺伝子が多い

不眠の理由の1つとして、「眠ろうとするとさまざまな不安が頭をめぐって、眠れなくなる」というのがあります。どんなに「気にしないでおこう」と思っても、ついつい考えがそちらに向かってしまうという人も多いのではないでしょうか。

実はこれ、生まれつきの性格や思考パターンによるものとばかりは言えない部分があります。と言うのも、日本人特有の体質で大きく左右されることがあるからです。以下、神経伝達物質のセロトニンを題材にご説明しましょう。

セロトニンは、精神安定をもたらします。このセロトニンを生み出すものが「セロトニントランスポーター」というものなのですが、セロトニントランスポーターにはL型とS型があり、L型よりもS型のほうが、セロトニンの生成量が減ります。

つまり、セロトニントランスポーターにS型が多いと、セロトニン生成量が減るため、精神安定も弱くなってしまうのです。そして日本人は遺伝的にS型の保有率が高いということを、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長が発見しました。

「まあいいか」と安眠できるのは5人に1人

S型の保有率が、日本人においては80%近くという結果が出ています。大まかに言えば、「今日もいろいろあったけど、まあいいか」と楽観的に考えてグーグー眠れる人は、日本人5人のうち1人しかいないということです。

この結果を見る限り、「日本人は、寝る前に不安が襲ってくるような考え方を改めましょう」というのは、ほとんど無理だと思いませんか?

考え方が後ろ向きだったり心配性だったりするのは、個人の資質によるものではありません。むしろ日本人としては平均的なのです。

だから、スムーズな眠りを手に入れるには、思考パターンを変えようと躍起になるよりも、環境や体からのアプローチ(環境や体を変えようとすること)のほうが、よほど有効だし合理的ということになります。

その方法については本書で詳しくご説明しますので、まずは「眠れないのはあなたの思考パターンが暗いからではない」「あなたのせいじゃない」ということを心に留めておいてください。