スイッチングを邪魔する「夜のスマホ」

日中、活発に動いたり頭を働かせたりしているときに優位になっているのが交感神経。これに対して、リラックスした状態のときは副交感神経が優位になるという具合に、無意識のうちにスイッチングが行われているのです。

つまり夜、ちゃんと眠くなるためには、副交感神経が優位になっている必要があるというわけです。

仕事が終わって家に帰り、ちょっとビールを飲んで野球中継でも観てからお風呂に入る……、というふうにだんだん自律神経系が休息モードの副交感神経優位になっていって眠りに就くというのが、21世紀入って間もないくらいまでの勤め人のパターンだったのですね。

ところが近年、この交感神経と副交感神経のスイッチングを邪魔するものが、私たちの生活に切っても切り離せないものとして登場してきました。

それがスマホです。スマホの刺激によって本来、交感神経から副交感神経に切り替わるはずのタイミングでうまく切り替わらず、交感神経が優位なままで脳が覚醒してしまうのです。

東京の夜の街並み
写真=iStock.com/ferrantraite
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「白くて明るい部屋」が安眠を妨げる

【4】夜間照明が明るすぎる

睡眠と覚醒には「メラトニン」というホルモンが関係しています。

メラトニンは脳の松果体しょうかたいと呼ばれる場所から分泌されるホルモンで、覚醒と睡眠を切り替えて自然な眠りを誘う作用を持っています。そのため「睡眠ホルモン」と呼ばれることも。

メラトニンの分泌は、主に光によって調節されます。人は朝、光を浴びることで体内時計から信号が発せられ、メラトニンの分泌が止まって覚醒します。

そして目覚めてから14〜16時間後になると体内時計からの指令によって、再びメラトニンが分泌され始めます。その分泌量は時間の経過とともに増えていき、その作用で体の深部体温が下がり、眠気を感じるようになっていくのです。

つまり、メラトニンは光の量に反比例して増えていき、スムーズな睡眠を誘います。しかし、メラトニンの分泌を妨げる要因が、今の日本には増えてしまいました。オフィスや駅などの公共施設、街中、店さらには自宅の照明の明るさが代表例です。

日本という国は、諸外国に比べて照明の明るい国。駅などの施設の照明については、諸外国に比べて40%程度明るいという調査結果があるほどです。

またメラトニンの分泌には、光の“色”も関係していると言われています。白色に近くなればなるほどメラトニンが分泌されなくなり、黄色に近ければ近いほど分泌量が増えるとされているのです。

光の「強さ」と「色」、この2つの点で、煌々と蛍光灯を照らす環境が多い日本は、メラトニンホルモンの分泌をさせなくして、安眠を妨げていると言えるでしょう。