現在、スマートフォンユーザーで、「仕事では、まったくスマホを活用していない」というビジネスパーソンは、おそらくほとんどいないだろう。通話やメールの確認はもちろん、業務ファイルの閲覧、スケジュール管理、名刺管理など、多彩なアプリも利用しながら、それぞれに便利なツールとして使いこなしているに違いない。
となると、“経営の視点”からは、ここで一つの課題が生まれることになる。スマートフォンが、さまざまなビジネスシーンで活躍するなか、それを会社として「支給するか、しないか」という問題だ。その是非は、もちろん個々の企業によって異なるだろうが、まずは関連するアンケート調査の結果を見てみることにしよう。
マーケティングリサーチ事業を展開する(株)アイシェアの調査によれば、「仕事で私用携帯を使っている人のうち、業務上発生した携帯の利用料金を自腹で支払っている人」の割合は88.6%に上り、その利用金額は月平均で3090円だという(20代~40代の男性1000人への調査)。「自腹」の理由としては、「精算の申告が面倒」「会社が精算してくれない」などが挙げられている。さらに興味深いのは、「どの程度まで自腹を許容できるか」を聞いたところ、その平均は2299円で、許容額を超えた場合、53.5%が「業務上の携帯利用を差し控える」としている点だ。
つまり実態としては、私物の携帯電話やスマートフォンを仕事上でも使いながら、その通話料の支払いについて、多くのビジネスパーソンが不満を持っているわけだ。実際に「業務上の携帯利用を差し控える」ということになれば、会社側としても、その影響を見逃すことはできないだろう。だからこそ、いま「BYOD」というキーワードが経営の現場でも徐々に注目され始めているのである。
BYOD(Bring your own device)とは、簡単に言えば「私物のデバイスを業務で利用する」こと。海外企業などでは、積極的に進めるところも現れている状況だ。こうした現状を踏まえ、「日本においても、企業においてきちんとルールを設けるべき」と指摘するのは、この分野に詳しいフリーライターでジャーナリストの西田宗千佳氏だ。「BYODという言葉自体は必ずしも重要ではないが、私物のスマートフォンなどの業務利用を黙認している状況は、コンプライアンス上も問題」というのだ。