刑事部長と生安部長の関係性
――刑事部長と生安部長のポストに差はあるのですか。
かなりあります。通常は同い年で同じように昇進したら、最後の1年間はお互いどちらかが先に刑事部長のポストに就いて、1年早く勇退するんです。そして、先に刑事部長になった人は1年早く辞め、給料も待遇もいい天下り先をあてがわれます。鹿児島県警の前刑事部長は、今年、本田氏と一緒に定年退職したようですが、日本の警察には厳然とした階級システムが今も当たり前のように存在しているのです。
――ナンバー2の立場であっても退職前には声を上げられないものなのでしょうか。
普通はなかなかできないでしょうね。現職の警察官が内部の不祥事に対して異議申し立てなどしようものなら、即「マル特」とされ、出世の道は完全に断たれますから。
裏金を告発した自身の経験
――「マル特」とは何でしょうか。
特別指導対象者です。ようするに、組織にたてつく要注意人物のことですね。
――仙波さんは愛媛県警在職中に警察の裏金問題をたった一人で「警察による犯罪だ」と告発しました。仙波さんも「マル特」になったのでしょうか。
もちろんです(笑)。私は1973年、24歳のときに愛媛県警で裏金のための偽領収書作成を拒否してから、昇進試験に落とされ続け、途中で試験を受けるのをやめました。その後も、子どもがいてもお構いなしで、僻地へ転勤させられたり……。結果的に、巡査部長を36年間も続けることになりました。これはギネス記録なんです。結局、だれしも生活があるし、私みたいに組織に対して「襟を正せ」なんて言っていたら、普通は暮らしていけません。
――内部告発者に対する報復ですね。
最初は皆、一点の曇りもない心で組織を信じ、正義感を抱いて警察に入るんです。しかし、「源清ければ流れ清し」とは逆で、トップが腐れば下も腐ります。「ニセの領収書を書け」という命令をはじめ、私が愛媛県警にいたころは、国会議員や県会議員に頼まれたら、交通違反も全部もみ消し。そういうことが当たり前でした。
私は40年以上の在職経験がありますが、裁判所ではいつも、「警察は犯罪組織です。日常的に犯罪を行ってるのは、やくざと警察です」と陳述しています。今も冗談で、「日本の警察は、セ・パ両リーグの覇者ですよ」と言ってるんです。