不祥事が噴き出した鹿児島県警

警察官の不祥事が後を絶たない。鹿児島県警では6月、県警トップの本部長が警察官の不祥事を隠蔽した疑惑が浮上。県警ナンバー3だった元生活安全部長が国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕・起訴された。
本部長は「隠蔽を指示した事実はない」を繰り返し強調してきた。警察庁は6月に本部長を訓戒処分とし、6月から8月まで特別監察を実施した。再発防止策を取りまとめ、新たに、県警本部長と各部長、監察官らで構成される「改革推進委員会」を立ち上げるという方針を明らかにした。果たして、再発防止策で県警組織を浄化できるのか。
愛媛県警に在職中、現職警察官の立場で警察の裏金づくりを告発し、定年退職するまで組織の中で闘い続けてきた仙波敏郎氏(75)に、自身の体験、そして今も続く警察の不祥事についてその原因や思いを聞いた。
記者会見で謝罪する鹿児島県警の野川明輝本部長(右から2人目)=2024年6月21日、鹿児島市
写真=時事通信フォト
記者会見で謝罪する鹿児島県警の野川明輝本部長(右から2人目)=2024年6月21日、鹿児島市

――仙波さんは愛媛県警に在職中、現職警察官の立場で警察の裏金づくりを犯罪であると告発し、定年退職するまで組織の中で闘い続けてきました。今回の鹿児島県警の不祥事をどのようにご覧になっていますか。

「100番事件」、つまり、警察官が当事者となった事件や事故は、本部長指揮となるのが通常です。報道によると起訴された本田尚志前・生活安全部長は鹿児島簡裁で開かれた勾留理由開示手続きの意見陳述で、枕崎署員による盗撮事件を「野川明輝本部長が隠蔽しようとしたことが許せなかった」と主張していたようですが、とにかく普通はあり得ないことですね。

元生安部長の異例の逮捕・起訴

――前生安部長による内部告発にはどんな意図があったのでしょうか。

規制や監視の厳しい警察組織の中で、これだけ石を投げるということは、ある意味正義感もあったんだと思います。ただ、本田氏も普通の警察官と五十歩百歩という印象を受けます。彼は退職後の今年3月、盗撮をおこなった元巡査部長をめぐる警察の内部情報を北海道在住のジャーナリストに匿名で郵送し、国家公務員法違反(守秘義務違反)容疑で逮捕・起訴されました。この行為が「公益通報」にあたるか否かという点も注目されていますが、真の公益通報であれば、組織から何をされても、何を言われても、私のように現職時代から名前も顔も出して堂々とやるはずです。

――生安部長とはそもそもどのようなポストなのですか。

生活安全部の部長です。ノンキャリの最高ポストは刑事部長なので、県警の中ではナンバー2になります。本田氏は鹿児島大学卒で刑事部長への昇進間違いなしと言われていたようですが、結果的に刑事部長になったのは、同い年で高卒の人物でした。

同い年の場合、高卒は大卒より4年早く警察官になります。仕事、世渡り、根回しなども高卒者のほうが先に会得していきます。そのため、私が在籍していた愛媛県警でも、出世競争では高卒者が勝っているケースが多かったですね。