※本稿は、松本哲(著)、本間龍介(監修)『楽しく遊びながら子どもの「発達」を引き出す本』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
“ものを握る反射”が残っていると、勉強が苦手に
原始反射は乳児期早期に見られる反射で、成長とともに運動機能が発達していくにつれて自然に消えていくものですが、残っていると、学習のつまずきにもつながります。私が運営する、児童発達支援・放課後等デイサービスの運動教室LUMOに体験でいらっしゃる親御さんからのご相談でも、学習の悩みはとても多いものです。そもそも、これまでも本書でお伝えしたように、集中力が続きにくく、気が散りやすいため、先生の話を落ち着いて聞くことができません。
また、ものを握る反射である掌握反射(把握反射)が残っていると、手先が不器用なため、鉛筆をうまく使えず、文字を書くのが苦手になる、筆圧が強すぎる、または弱すぎるお子さんもいます。力の入れ具合がわからないため、筆圧をコントロールできず、字のバランスが悪くなる子が多いのも特徴です。漢字の「うかんむり」を書かせるとやたら大きくなってしまったり、「へん」と「つくり」のバランスが悪くなってしまったり。
もちろん、掌握反射が残っていても字は書けます。でも、ひらがななどに見られる曲線は、初めて字を書く子どもにとって難しいものです。掌握反射が残っていればなおさら微妙な線を書くのは難しく、力まかせに書いたり、腕全体を使って書いてしまったりします。そのため、筆圧が強くなったり、マスから字がはみ出てしまったりします。原始反射が残っていると、ダイレクトに学習に影響しやすいのです。
じゃんけんの「グー」の形でわかる
教室では両手両足をついて歩く「クマさん歩き」をよくするのですが、掌握反射が残っていると、両手両足をつくときに手のひらを広げて床につくことができず、指を丸めてしまう子がいます。
じゃんけんをしたとき、グーの形を見ると、掌握反射が残っているかどうかがわかります。手のひらがしっかりグーの形に握られ、親指が小指のほうに向いて握られていればOKです。掌握反射が残っている子は、親指が立ってしまったり、親指が手のひらの中に入れ込まれていたり、中指と薬指の間から親指が出ていたりします。
字が上手に書けないだけでなく、箸が上手に持てない、親指、人差し指、中指の3本の指を使って細かいものをつまむことができなかったりもします。遊びの中で掌握反射をととのえたいなら、指相撲もおすすめです。ぜひ、お父さんなどと楽しくやってみてください。
そしてもう1つ、ビジョン(視覚。第1回を参照)をととのえることも重要です。たとえば、子どもに「太陽(おひさま)の絵を描いて」と言うと、太陽の丸を描くときに、描き始めと描き終わりが合わない、つまり、しっかり閉じた状態の丸を描くことができない子がいます。掌握反射もかかわっていますが、同時にビジョンがととのっていないと、きちんと見えていないためにこのようなことが起こります。これは、視力がいい・悪いは関係ありません。