字を書くのを嫌がるワケ
目を動かす神経とかかわっているので、ものを描くときに眼球が動かず、頭や首が動いてしまう。あるいは、動かしやすい方向にばかり動かしてしまう。そうなると、教科書に書いてある文字もうまく読めず、音読が苦手になることもあります。ビジョンをととのえることで、文字情報が入ってきやすくなり、音読が上手にできるようになります。
また、ATNR(非対称性緊張性頸反射)が残っている子には、文字のバランスが悪くなったり、文字を飛ばして書いてしまったり、書き間違いなどもよく見られます。「へん」と「つくり」が左右逆になったり、鏡文字を書いたりすることもあります。このほか、原始反射が残っていると、姿勢を保てなかったり、板書が苦手になることもよく見られます。
掌握反射が残っていると、上手に字を書けない、字がマスからはみ出す、筆圧のコントロールができないなどのトラブルが出てきます。そのため、字を書くのを嫌がったり、字を書くスピードが遅くなってしまい、学校の勉強は苦痛なものになってしまいます。鉛筆をグーで握ってしまって注意をされたり、きちんと握っているつもりでも力のコントロールができず、うまく書くことができません。
“手のひらを使う運動”で反射がとれる
そうなると、そもそも書くこと自体を嫌がる子もたくさんいます。たとえば、LUMOに通われている、自閉症で発語が見られない小学校3年生のFちゃんという女の子がいました。筆記だとコミュニケーションがとれるので、なんとか文字を書かせたいのですが、鉛筆を持つことそのものを嫌がっていました。
それが、マット運動を行い、少しずつできるようになってくると、それに合わせるかのように文字を書く練習を一生懸命やるようになったのです。マット運動でとくに手のひらを床につく動きをすることで掌握反射がとれていきます。おそらく、掌握反射が統合されていくにしたがって、鉛筆を持ち、文字を書くことにも抵抗がなくなってきたことも大きかったのではないでしょうか。
Fちゃんには後日談もあります。文字を書くことに抵抗がなくなり、たくさん文字を書くようになると、今度は絵を描くようになりました。それまで絵を描くことに興味がなかったのですが、なんと学校の図工の時間に、「紙が足りなくなるほど絵を描き続けている」と、先生から言われたそうです。
鉛筆や筆を持ち、何かを描くことがとても楽しくなったのでしょう。図工の時間は2コマあったそうですが、その時間、ずっと絵を描き続けている。これはすごい集中力ですよね。