「手先の不器用さ」も掌握反射が関係

掌握反射があると、ボール遊びも苦手になります。指が引っかかって上手にボールを投げられなくなるのです。先ほどお伝えしたATNRとビジョンとのかかわりは強いものです。小学校1年生のGくんは、ADHDと遠視がありました。GくんはLUMOに来る前、ある施設でビジョン(見る力)に問題があると診断され、ビジョントレーニングをしていたそうです。

これがGくんにはとてもつらいことでした。見たい方向に視線を動かせず、無理やり動かすように努力を強いられるのが、しんどかったそうです。そこでLUMOで運動をすることで原始反射の統合をすることがビジョンをととのえることになるのではないかと思ったお母さんがGくんを連れて来られました。

Gくんは掌握反射も強く残っていて、鉛筆や箸を持つのが苦手だということがわかりました。お母さんも、Gくんが不器用であることをとても心配していました。4カ月たった現在、正直なところ眼球の動きは目に見えてよくなったわけではありませんが、ボール遊びをたくさん行うことによって掌握反射がとれてきて、お箸の持ち方の練習に積極的になってきたそうです。「手先の不器用さが少しずつよくなっています」とお母さんは喜んでいました。

事例とともにいくつかご紹介しましたが、原始反射はいくつも同時に残存していることがほとんどです。その対策も1対1対応ではありません。子どもが嫌がることもあるかもしれませんが、できるもの、楽しくできるものを家庭でどんどん取り入れてみてください。

家のお手伝いで「手」の反射をととのえる

鉛筆や箸が持てない前項ともつながりますが、掌握反射が残っている子どもは手先が不器用で、指を対立する動き、つまり、つまむことができません。たとえば、本のページをめくるときや細かいものをつまむとき、親指と人差し指、中指を向かい合わせて対立させるように使いますが、これがうまくできないのです。そのため、学校で使うコンパスや定規などの勉強道具をうまく使うことができません。

コンパスを開いて、針を中心に指して円を描く。これができずに、途中でコンパスが倒れてしまったり、円の最初と最後が閉じるように描けなかったりします。なお、コンパスや定規の先っぽや角は鋭くとがっています。モロー反射が残っていると、この先っぽや角が怖いから使うのが嫌だという子もいます。

小さい子どもならティッシュケースからティッシュをつまんで出す、などの動きもおすすめですが、もう少し大きくなったら、つまむ作業のほかに手に刺激を入れる動きを加えましょう。家の廊下をクマ歩き(両手両足をついて歩く)してもいいですね。

家のお手伝いにもたくさん手の刺激になる動きはあります。たとえば、洗濯物を干すこと。洗濯バサミの閉じ開きは、指の対立運動にはとてもいいものです。お料理でも、ハンバーグを丸める、野菜を切る、パンをこねるなど、手の刺激となることはたくさんあります。