警察は「一番汚い手を使った」

――警察庁は6月から鹿児島県警に特別監察をおこない、県警はその結果を受けて再発防止策を発表しました。県警組織は浄化できるのでしょうか。

私がなにより問題だと思ったのは、警察庁の対応です。警察庁の監察部門トップはじめ計3人が鹿児島県警に「特別監察」に入りました。特別監察は8月2日まで続きましたが、隠蔽の指示があったかどうかを調べるわけではなく、一連の不祥事を踏まえ、鹿児島県警が取り組む再発防止策が「しっかりと行われるよう」に指導するのが目的です。問題の真相は未だにはっきりしていません。

また、問題が解決していないにもかかわらず、特別監察が入る前の6月の段階で警察庁は野川本部長を「懲戒処分」ではなく、「訓戒処分」にしました。理由は「捜査状況の確認を怠った」というもので、すでに本部長による隠蔽の指示は「なかった」と結論付けた上での処分でした。

監督責任上の処分をしただけなので、結局、彼は無傷で本庁に帰ることができます。そうしておけば、この先、万一話が大きくなっても、「もうこの件は処分しています(一事不再理)ので」ということで、幕引きを図ることができる。本田氏が国家公務員であったこと、そしてもちろん野川本部長も刑事部長も国家公務員であり、国家公務員だけによる不祥事(犯罪)であったことも、早い幕引きの理由の一つと考えられます。

私から見れば、一番汚い手を使ったと言えるでしょう。監察というのは、昔でいう憲兵みたいな役割ですが、彼らの目的は、真相を解明することではないのです。真相が解明されないままの再発防止策に実効性があるとは思えません。

交番の看板
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なぜ警察から不祥事がなくならないのか

――最近ではメディアもあまり報じなくなりました。

当然のことながら、警察はメディアに対してすごい圧力をかけますからね。もちろん、本田氏自身も相当詰め寄られているのではないでしょうか。彼はぎりぎりまで現職で、しかも部長でした。それだけに、元幹部として暴露されたら困ることが山のようにあるため、県警本部は口封じに躍起になっているはずです。

鹿児島県警の問題は、決して過去の問題ではありません。報じられることは少なくなりましたが、現在も続く深刻な問題です。警察の不祥事はなぜなくならないのか。その背景にあるのが裏金問題です。全国の警察官は裏金によって心をむしばまれているんです。

裏金を作るためにニセ領収書を書くと、どれだけの罪になるかご存じですか? 私文書偽造で3カ月以上5年以下の懲役、公文書は1年以上10年以下の懲役。それだけではありません、詐欺罪が10年以下、業務上横領が10年以下、脱税にあたる恐れもあります。

警察官は皆、こんな犯罪を当たり前のようにやってるんです。心が荒まないはずがありません。私は警察不祥事の元凶のひとつは、間違いなくこの裏金制度だと断言できます。(後編へ)

夜の街をパトロールする警察官
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