冠婚葬祭互助会をめぐる消費者トラブルが後を絶たない。佐藤葬祭代表の佐藤信顕さんは「月掛金を積み立て冠婚葬祭のサービス費用の一部に充てる仕組みで、相互扶助の精神のもと生まれた。しかし、近年は営利を優先する傾向強くなっている。特に、解約時に高額な手数料をとられトラブルになるケースが目立つ」という――。
冠婚葬祭互助会とは
葬儀社にはさまざまな業態があります。専門業者やJA(農協)などの団体運営のほかに、冠婚葬祭互助会というものがあります。
急な身内の不幸があり互助会で葬儀を行うと、社員から見積もりの説明を受ける際に「これを機に互助会に入りませんか。入っていただけると次にご自身やご親族に不幸があった際に通常より安く葬儀ができますよ」と勧誘を受けることがあります。
互助会とは元々、終戦後の皆が貧しいころに少しのお金でもみんなが出し合い助け合うことで、花嫁衣裳を共有したり、葬儀の時の祭壇を皆で持ったりし、立派な結婚式やお葬式を執り行おうという相互扶助の精神で成立したものです。
割賦販売法に基づき運営されており、一定の金額を積み立てれば物価高騰にかかわらず、一定のサービスを受けられるものとして昭和50年ごろから社会に浸透してきたという背景があります。
しかしながら、現在では顧客囲みの色が強くなってしまっていると言えるでしょう。
「終活相談」などで集客
互助会は葬儀を行った顧客への営業のほか、不要になったぬいぐるみや人形などの「供養祭」や「終活相談」などと称してセレモニーホールなどでイベントを開き、集客を行うことが多いです。そこで、「自身の葬儀について準備はしていますか? 互助会に加入すれば特別価格で葬儀ができますよ」と積み立てを持ちかけてきます。
金額は互助会によって異なりますが、「毎月数千円~1万円を数年間、計30万~60万円を積み立てれば、持ち出し費用ほぼなしで葬儀ができます」といった具合です。
急な出費に備えて「互助会の積み立てをすれば葬儀に心配がない」という名目で、会員数を増やしてきたのが冠婚葬祭互助会というものです。しかし、筆者から見ると「互助の精神」はすっかり失われ、現状は営利企業でしかないと言わざるを得ません。