背景に「ノルマの過酷さ」

同業の葬儀社を個人で経営している筆者としては、互助会の社員をしている、もしくはしていた友人から会社の状況を聞かされることがあります。その時によく聞くのがノルマの厳しさです。

湯灌ゆかんやエンバーミング、生花のオプションなど、売上目標達成のために各社員にノルマが設定されているといいます。互助会社員の本音としては「ノルマは理解はできるけれど、ノルマに追われることなく、お金がない人はお金がない人なりに、目の前の遺族の状況に合わせて葬儀を提案したい」と思っているようですが、会社から課せられたノルマがあり、営業を強めにしないといけないのが心苦しいといいます。

最近多く聞くのが、エンバーミングという遺体防腐処置の不必要な提案です。これは長期にわたる保存を可能にする遺体保全方法で、首と股の付け根の血管を小切開し、血液の代わりに防腐液を注入して遺体を保全する優れた方法ではあるのですが、原価にして15万~20万円程度、それに自社の利益をのせてサービスを提供するので20万~30万円程度という高額なオプションです。

「互助の精神」は失われた

荼毘だびに付すまで3~4日であれば1日1万円程度のドライアイスで十分保全できるところを、会社のノルマのために「エンバーミングをすれば、ご遺体の腐敗を抑えられます。顔色も良くなります」などと営業されることが多いようです。「不必要なオプションを営業しなくてはならないことが葬儀担当者として非常に心苦しい」という気持ちを互助会の社員から聞いたことがあります。

このように、必要ではないと担当者がわかっているのに、冠婚葬祭互助会の業績や利益のためにノルマを課せられているというのは、互助会本来の「少しのお金でもみんなで出し合えば立派な葬儀ができる」という精神からかけ離れたものになっています。会社の規模が大きくなって、元々の互助の精神を失ってしまったのではないかと筆者は感じます。

豚の貯金箱に6人がコインを入れようとしている
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