性風俗産業に寛容な日本社会。街には性風俗専門とした求人情報の宣伝カーが悠然と走っている。ジャーナリストの此花わかさんは「例えば、イギリスには看板サイト、新聞、ポスターなど有害な性的表現やジェンダーステレオタイプを描く広告を規制する団体があり、厳しくチェックしている。日本の現状を見たら、一発で規制されるだろう」という――。(後編/全2回)
ごった返す渋谷駅前を走行する性風俗求人サイトの宣伝カー
日本には2兆~6兆円ともいわれる性風俗産業があり、その存在や「風俗は浮気ではない」とSNSで女性が無邪気に発信していることで、世界中から日本へセックスツーリズムにやってくるインバウンド客が後を絶たないといった現状を前編で述べた。
問題はそれだけにとどまらない。こうした空気は性産業に従事することに対するハードルを著しく低くしている。
8月下旬、筆者が渋谷駅前を歩いていたら、性風俗専門とした求人情報「バニラ」のティッシュを渡された。ティッシュには求人サイトのQRコードが載っており、女性だけではなく男性の求人も宣伝されていた。そして、ふと顔をあげると駅前を風俗求人サイト「ガールズヘブン」の宣伝カーが2台ゆっくりと走っていたのである。
夏休みで小中高生など未成年の男女でごった返す街中。2つの性風俗求人サイトの広告が目に飛び込んできたことに衝撃を受けたが、筆者以外の人はその宣伝カーに特段気を取られていなかった。それほど普通の風景ということなのだろうか。
このような性産業を促進するような広告が、子どもの目にも入る公共の場所で展開されてもよいのか。他国の例を見てみよう。