新築マンションが建築ラッシュ

高知市の中心部では、数年前から新築マンション建設のラッシュが続いている。新聞の折り込みチラシには新築マンションの広告も多い。地震の際も、マンションの頑丈さと高さがあれば安心というのも、心が動いた要因の一つだった。

「ものは試しに」とモデルルームを訪れ、話を聞いて検討すること半年。妻の膝の痛みが慢性的で悪化してきたことも後押しし、住み替える気持ちが固まった。

いまのマンションに越して3年。真新しい、ワンフロアのフラットな空間での生活は、想像以上に快適だ。生活に必要なものは徒歩圏内でそろい、車に乗る頻度がぐっと減った。

「快適やけど、必要に駆られて車に乗って出かけたり、庭仕事をしたりと、何かと用事があった一軒家の暮らしを懐かしく思うこともある。不便で動かないかんかったのも、リハビリになるというかね。今は散歩が中心のゆったりした暮らしになったけど、快適さに浸かって老化が進まんように気をつけないかんね」(Eさん)

シニアは持ち家からマンションへ

シニア層が郊外の持ち家から中心部のマンションにシフトする動きは、さまざまな地方都市で顕著だ。県庁所在地でのマンションの建設ラッシュは多くの地方都市で起きている。例えば、2020年代に再開発に力を入れ始めた青森県では、JR青森駅周辺を中心に、商業ビルやタワマンの開発計画が進む。アジアからのアクセスの良さや海外の大企業の進出などで注目される九州も同様で、これまでタワマンがなかった宮崎県と大分県でも、開発が進行中だ。

地方の県庁所在地の中心部は、スーパーや病院も近く、生活利便性が高い。将来の運転免許の返納に備え、車が不要な場所に住み替えるニーズや、段差のないバリアフリーの空間へのニーズなども背景にあるようだ。戸建てより光熱費も安く済む。

宅地もインフラも効率的に

地方都市の新築マンションには、「入居者の半数が住み替えシニア層という物件もある」(不動産会社)という。

人口減少を背景に、都市機能を集約して行政機能を効率化する「コンパクトシティー」構想の影響もある。実際、Eさんの住む高知市でも、政策としてコンパクトシティー化が進められている。「まちなか居住」を推進する動きもある。宅地が広がれば、水道や道路などの公共インフラ整備が欠かせず、維持管理の財政負担が増す。宅地もインフラも集中させたほうが効率的なのだ。