白か黒かをすぐに分割する「不適応思考」が根底にある
「Aさんと比べて自分は劣っている」
「Bさんがあんな態度をとったのは、きっと自分が嫌いだからに違いない」
そんなふうに他者と比べたり、他者の態度を過剰に意識して落ち込んだりしているのは、あなたが勝手にそう決めつけているからでしかないのです。
精神科医ベックが指摘した、白か黒かをすぐに分割して、勝手に判断して、相手の気持ちまで自ら決めつけてしまう自動思考、つまり「不適応思考」が根底にあるのです。
この不適応思考が、前頭葉バカになるとなおさら進行しがちになるのも、すでにお伝えしたとおりです。ただし、自分の思考に原因があるのだから、あなたが変われば対人関係で悩むことも基本的になくなるのもまた事実。
本稿では、そうした事実を踏まえて、自分を縛る人間関係をどう変えていったらいいのか、人との接し方の「常識」をどう捨てたらいいのかをお伝えしていきましょう。
50歳からは「不真面目」を心がける
前頭葉バカにならずに、ムダに気を病んだりせずに、50代以降の日々を過ごしたいならば、まず「不真面目」になることを強くおすすめします。
ブラック企業といわれる、従業員に対して上司や先輩による長時間労働やパワハラが横行する組織があります。
実は真面目な人ほど、このブラック企業の上司や先輩になる傾向が強いのをご存知でしょうか?
真面目な人は、自分が信じている対象に誠実です。宗教でも、常識でも、企業理念でも、その対象が何であれ、「私が信じているものは絶対だ!」と思ってしまう。
だからこそ、その信じる何かに従わない相手を、「不届き者だ」「異常者だ」と蔑み、拒絶し、修正しようとするのです。「なぜ、その程度の成績なんだ!」と自分が思うより成績が悪い部下を叱責し、重いノルマを負わせるのも真面目ゆえ。
「がんばり方が足りないんだ!」と長時間労働を強いるのも、信心深いためなのです。
1970年代のカンボジアに、まさにこれと似た構造がありました。
当時のカンボジアを支配していたのは共産主義で独裁者だったポル・ポト政権。国の人口の4分の1に当たる170万~180万人もの人を虐殺してしまいます。
虐殺の裏には真面目な国民性があったといわれています。行きすぎた共産主義を崇拝し、社会の浄化を生真面目に成し遂げようとした結果、凄惨な悲劇につながったとも考えられています。