根本的な原因は「コメの生産量低下」にある

コメ不足の原因として、冒頭で指摘したように「2023年の猛暑」と「インバウンド消費の増加」が挙げられている。

だが、政府も認めている通り、2023年のコメの作況指数は101と、不作とは言いがたい。猛暑の影響で1級米が減少したほか、日本海側で不作だった影響もあるが、コメ不足」の原因を異常気象だけに求めるのは早計だろう。

またインバウンド消費の増加についても、増加量は約1%程度という。

では根本的な原因は何かというと、「コメの生産量が低下している」ことにあると考えられる。

稲作農家の平均所得は「1万円」

政府はこれまで「コメの過剰在庫」を理由に、農家に厳しい政策をとってきた。

①生産者には生産調整強化を要請し、②水田を畑にしたら1回限りの「手切れ金」を支給するとして田んぼ潰しを始め、③農家の赤字補填はせず、④小売・流通業界も安く買いたたく。

農家を苦しめ、コメの生産を減らしてきたのである。

実際に、農水省が公表している「営農類型別経営統計」を確認すると、農家の苦境に驚くほかない。

稲作農家が1年働いて手元に残る所得は、2020年の時点で、1戸平均17.9万円しかなかった。時給にすると181円という低水準である。

だが、2021年、2022年には、コロナ禍でコメ消費量が落ち込んだこともあり、年間の平均所得はなんと1万円に低下している。時給換算だと10円である。

10円硬貨
写真=iStock.com/NonChanon
時給換算だと10円(※写真はイメージです)