「インフレで農家は儲かっている」は間違い

「インフレの影響でコメ価格が上昇しているのだから、コメ農家の収入も増えているはずだ」と思う向きも多いであろう。

たしかに、現在のコメ価格は上昇しているが、農家がコメを売ったのは昨年である。もちろん昨年のまだ安かった米価で売っている。だから農家に値上がりのメリットは還元されていない。利益を得ているのは流通・小売だけである。

そもそも店頭のコメ価格は上がっているが、生産者米価はまだまだ低水準にある。

現在、生産者米価は1.6万円/60kg前後となっているが、コメの生産コストも1.6万円/60kg強であり、やっとトントンか、まだ赤字という水準だ。

ある稲作農家は筆者に、「家族農業の米作りは、自作のコメを食べたい、先祖からの農地は何としても守るという心意気だけで支えられている」と語った。

もっと農家を支援しなければ、農家ももたないし、国民ももたないという状況になっている。

政府はコメの生産を奨励すべき

政府はコメの生産を奨励する政策をとるべきだ。

その結果、もし「コメ余り」になったとしても、政府備蓄を増やすことで対応できる。

備蓄米
写真=iStock.com/nakornkhai
政府備蓄を増やすことで対応できる(※写真はイメージです)

そもそも、今夏のようなコメ不足に対応するために、政府備蓄がある。

政府の言う通り「9月には解消」する一過性のコメ不足なら、なおさら政府備蓄の放出で対応できるはずだ。

十分な政府備蓄があれば、「異常気象によるコメ不足」にも対応できるはずだ。

近年は猛暑の年が続いているし、異常気象も毎年恒例となればもはや異常でもなんでもない。対応できないような「想定外の事象」とはいえない。

インバウンド消費の急増についても、コロナ禍前に戻ったわけだから、想定外ではない。

需給の変化は当然起きると考え、それに対応するために十分な政府備蓄を確保するのが政府の仕事であるはずだ。

そのために、農家を支援しコメの生産を奨励する政策こそ、本来政府がとるべき方針であるのは言うまでもない。