偏見や錯覚に満ちた老人像を疑った医師が発見したもの
そして、それに反する意見をもつ人を糾弾するということは、実際たくさん起きています。
テレビやネットがスケープゴートをつくり出し、それを徹底的にたたいたとしても、何の不思議にも思わない人がこの国にはあふれています。
「まず疑ってみる」という姿勢に関してひとり、わたしの大先輩を取り上げましょう。医学博士の柴田博先生です。
先生は長年、老年医学を専門に研究されてきました。この国の多くの肩書だけの権威とは違い、とにかく既存の知識を疑い、調べるということを徹底してきた方です。
老年医学は高齢化が進んだいまでこそ注目が高まっていますが、長いことその分野で使われる基礎情報は古いもので、「老人はだいたいこんなもの」的な見方をする専門家しかいなかったと言います。
先生は使いものにならない知識や統計データを疑い、偏見や錯覚に満ちた「だいたいこんなもの」的な老人像を疑い、不明点についてフィールドリサーチを行い、現実を観察するという手法を続けました。
たとえば、前述の小金井市の高齢者を15年も追跡調査した結果、コレステロール値がやや高めの人がいちばん死亡率が低かったことや、この年代の高齢者でも15年間で言語性知能は落ちないなどという発見をしているのです。
疑うことで新しい発見に出合えるかもしれない
従来型の医学常識をまず疑ってみるという姿勢は、80歳を超えるいまも貫かれています。
先生の著書を見れば、多くの人たちが正解と考えてきた医学関連諸説も、じつは怪しいのかもしれないと気づかされるでしょう。
先生が伝えたいのは、「いまの医学常識を疑わないと長生きできません」ということ。そんな先生の研究姿勢からわたしたちが学べるのは、「疑う、そして観察する」ことの大切さです。
疑い、観察することで新しい発見に出合える。
することが見つからず、時間つぶしで漫然とテレビを見ているより、よっぽど楽しい生き方だと思いませんか?