そもそも生物には“生きる”という目的はない
言うまでもなく、生きとし生けるものは、やがて死を迎えます。ヒトも例外ではなく、何人も死から逃れることはできません。すべての生物は、死という宿命を背負って生まれてくると、言い換えてもいいでしょう。多くの人は、若いときにはそれほど死を意識しません。けれど、私のように50年以上生きていると、体が思うように動かなくなったり、疲れを感じやすくなったり、白髪やシワが増えてきたりして、「老い」を実感するようになります。周りの親しい人も、だんだんとこの世から去っていき、私の世代になると、同世代の友人が、先に亡くなるケースも増えていきます。そうしたとき、悲しさや寂しさを感じるだけでなく、「もうすぐ自分の番がやって来るな」と、底知れぬ恐怖を覚えた経験が、中高年の人にはあるかもしれません。
私たちが死を恐れるのは、実は、至極当然のこと。ヒトを含めた生物のすべては、基本として死に抗って、可能な限り生きながらえるように、生存本能をプログラミングされているからです。言い換えれば、自然界の中では、「死を恐れて、懸命に力強く生きよう」とする生物だけが、選択的に生き残ってきたというわけです。
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