“問いかけに答えていない”小論文やエントリーシートは通らない
小論文にしてもエントリーシートにしても、あるいは、履歴書や各種申請書にしても、「……について述べよ」「……を記しなさい」といった指示があります。先方は「このことを聞きたい」という意図を持って問いかけているのです。
先方が「聞きたいこと」と、書かれている内容が違っていれば、「そんなことは聞いていないのに」という反応になります。実際、大手メーカーの人から聞いたことですが、「大学生から送られてくるエントリーシートを読むと、聞かれていることと違うことを書いている人が多い」のだそうです。
そうなると当然のことながら印象はよくないですし、本来伝えるべき自分の思いが伝えられません。中には「問いかけ」からそれていることを書いていても、中身がとても良かったので、先方の目に留まった、というケースもあるにはあるでしょう。
ただ、それはまれなことでしょうし、そのために、問からそれたことを書くのはリスクが高い行為です。わざわざそういうことを狙う必要はないでしょう。
特に、大学入試や公務員・教員試験は、公的な試験です。公平性が重視されますから、「聞いていることと書いていることは全然違うけれど、面白いことを書いているから合格させよう」という恣意的な採点はできません。
書いていることが出題の趣旨からそれていれば、減点になります。採点基準として、「出題の趣旨を理解できているか」ということが明示されている場合もあります。ですから、出題に沿って書くことが基本です。
このように、文章を書く上では、問題文をよく読み、内容を正確に理解するということがとても重要なのです。
“問題文の理解”こそが文章作成のカギである
私は、これまでに何千人もの文章指導を行ってきましたが、そのうちの半数以上が、「問題文をよく読まずに書いた答案」です。毎日毎日「問題文をよく読まずに書いた答案」が届きます。
ある人に、「この答案は問題文をよく読まずに書いていますから、しっかりその意味を考えて答案を書いてください」と指導しても、別の人から届いた答案は、また、「問題文をよく読まずに書いた答案」です。その人に同じような指導をしても、また「問題文をよく読まずに書いた答案」が届く……という具合です。
中には驚くようなことを言う人もいます。答案だけ送ってきて「この答案を採点、添削してほしい」というのです。
「問題文がついていませんが、どこにあるのですか?」と聞くと、「どういう問題が出るかは本番にならないと分からないが、この答案を出すつもりなので指導してほしい」と言います。
思わず耳を疑ってしまうのですが、私が「いえいえ、順番が逆で、問題文を読んでそれに沿って答案を書くのですよ。問題文がなければ採点も指導もできませんよ」とお伝えしても、すぐには理解してもらえません。
そこで、私はこうお話しします。「例えば数学の場合、X=10という答えだけ持ってきて、『これでいいか採点、指導してください』と言われてもできないでしょう? 問題文がなければ何もできないはずです。
それと同じで、小論文も問題を見た上で、はじめてどうすれば良いか指導ができるのですよ」と説明して、「ああ、そういうことだったんですか」と、やっと分かってもらえます。こういうことも、決して珍しい話ではないのです。