主人公になりきる

じつは、人間は「自分のペース」でしか能力を発揮できないものです。自分の成功体験を思い出せばわかります。

いくつか受験し合格したときの入学試験では、あわてずに自分のペースで解答できたはずです。入社試験に合格したときの面接では、会場の雰囲気にのまれずに落ち着いて自分のペースで応答できたことでしょう。このように、「自分のペース」でものごとを行えば、よいパフォーマンスを発揮できるのです。

「相手と同じ土俵にのらない」ということでいえば、見栄の張り合いも同じです。

たとえば友人がブランド物のバッグを新調したら、「うらやましいなぁ」という気持ちになり、無理をして自分も高級バッグを新調してしまった、というようなことです。

枡野俊明『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)
枡野俊明『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)

あるいは、わが子の友だちがバイオリン教室に通いはじめたからウチの子も通わせるなど、子どもの向き不向きも考えずに同じ土俵にのるなんて、まったくトンチンカンなことになるかもしれません。

主人公しゅじんこう」という禅語があります。

一般的には「物語の中心人物」の意味で使われますが、禅では「本来の自己」(本当の自分)をいいます。「一点の曇りもない、持って生まれたまっさらな心」のことであり、自分のなかにある主人公に出会うために禅僧は修行しているのです。

主人公になりきることが、相手の土俵にのらずに自分のペースで生きることです。

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