職場でメンタル不調になりやすい人にはどんな特徴があるのか。精神科医の西脇俊二さんは「繊細な人ほど『自分は理解が遅い』『物覚えが悪い』と思い込む傾向がある。理解力や記憶力が足りないせいではなく、感受性が豊かだからだ」という――。

※本稿は、西脇俊二『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

仕事中にストレスを感じて目を抑えるビジネスウーマン
写真=iStock.com/Jirapong Manustrong
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「仕事ができる=マルチタスクができる」はウソ

「マルチタスク」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

複数(マルチ)のタスクを同時並行でこなすことを指す言葉ですが、仕事の現場などでは「マルチタスクが得意/苦手」といった表現はよくされているかと思います。

繊細な人にマルチタスクが得意かと聞くと、多くの場合「仕事の同時並行は不得手」という答えが返ってきます。それは感受性が高く、目の前のことに心を奪われやすいからです。その状態で、別の業務を同時にやるのは至難の業です。

しかし実は、繊細であろうとなかろうと、誰しもマルチタスクなんてできないのです。

人間の脳は、常に一つのことに注意が行くしくみになっているからです。

どんなにたくさんのタスクがあっても、そのとき取り組んでいる「第一位」は常に一つ。

「言われてみれば、たしかに」と思いませんか? どう頑張っても、同時に別の情報を取り入れることは不可能です。本を読みながらラジオを聴くのも、数行読んではラジオを聴いて、ラジオを聴いては数行読んで、と細かく切り替えているだけです。

つまり「マルチタスクが得意」という人も、実は「シングルタスクを素早く切り替えているだけ」なのです。そして不得意な人は、この切り替えが苦手なのです。

注意が分散して、ミスが増える

今の世の中では、それが今一つ理解されないまま「マルチタスクができる=仕事ができる」という、大雑把なイメージが先行しています。「仕事は一つじゃないんだから、マルチタスクで進めなさい」と言ってくる上司もいると思いますが、その上司は、本来無理なことを部下に強いているとも言えます。

そう言われたら、切り替えが不得手な部下は、「マルチタスクができるようにならなくては」という、無用な焦りに駆られますが、その結果、取り組んでいる最中のタスクにまで、支障をきたすことになるでしょう。

作業中に、「あれもやらなくちゃ、そういえばあれも……」と注意が分散して、どの業務もうまくできないといった事態が起こるからです。

心当たりがあるなら、「本当は、マルチタスクなど存在しない」ということをまずは認識しましょう。そして、目の前にある一つのタスクに落ち着いて専念しましょう。

「落ち着いて専念する」ためには、「目と手の協応」がキーポイントになります。