浮き足立った状態になると、視線は手元から離れてフラフラとさまよいやすくなります。脳の指令も手に届きづらくなり、ミスも増えます。そんなときは、「手元を見る!」と念じてみましょう。それだけで、分散した思考が、一点に戻ってきます。

毎日、朝か夜に5分間、「ゆっくりと字を書く」など、手と目を同時に使う日課を持つのもおすすめです。編み物が好きな方はもちろん編み物でもOKです。それが習慣化すれば、忙しい仕事のさなかでも、落ち着き方を思い出せます。

「仕事を同時にこなす」と考えないほうがいい

自分が落ち着いたところで減らない複数のタスクを相手にするための解決策も、ちゃんとあります。「シングルトラック」で段取りを組めばいいのです。

カレーを例に説明します。「カレーとサラダとプリン」を同時に作る場面を想定してみましょう。結構難しそうですが、どうでしょうか。次の図を見てください。

切り替えのうまい人は、マルチタスクならぬ「マルチトラック」で作業を進めます。「カレー」「サラダ」「プリン」という三つの走路があって、あるときはカレーのトラック、あるときはサラダのトラック、と左右に移動しながら走っていきます。

他方、切り替えが苦手な人は、左右移動がうまくできません。そこで、シングルトラックの登場です。3本のトラックを、1本にしましょう。調理なら、自分専用のレシピメモを書きます。

「カレー」「サラダ」「プリン」を1本の線でつなぐ

マルチトラック方式では「カレー」「サラダ」「プリン」の手順を別々にメモして、それらを並行して眺めながら作業していきますが、シングルトラックは、三つの料理の手順を、時間軸に沿った「1本」の線にします。

ジャガイモを切る(カレー)→ニンジンを切る(カレー)→タマネギを切る(カレー)→レタスとトマトを洗う(サラダ)→レタスをちぎる(サラダ)→トマトを切る(サラダ)→それを冷蔵庫に入れる(サラダ)→肉を切る(カレー)→鍋で肉に火を通す(カレー)→ジャガイモとニンジンとタマネギも入れて炒める(カレー)→卵を溶く(プリン)→牛乳を加える(プリン)→……――という具合です。

作業内容自体は、マルチトラックとまったく同じです。

でも、3本で表現するのと1本で表現するのとでは、印象が大きく違いますね。

別々に書いてあると「いつ、どのタイミングで、何をやるんだっけ」と混乱しやすいですが、1本なら大丈夫。安心して、まっすぐに迷わずに走れます。

問題に直面しているビジネスマン
写真=iStock.com/Chong Kee Siong
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