忙しさに追い詰められないためには何をすればいいか。禅僧の枡野俊明さんは「私は住職を務める傍ら、庭園のデザインや講演、本の執筆などのいろいろな仕事のほか、海外に行くケースも多いが、自分自身はさほど追い詰められている感じはしない。それは、規則正しい生活を心がけ、『自分の能力の二割増しくらいで仕事を請け負う』ようにしているからだ。三割になると負担が大きすぎるが、二割くらいだと、『よし、やってやるぞ』という心意気がわき出てくる」という――。

※本稿は、枡野俊明『仕事も人間関係もうまくいく引きずらない力 もっと「鈍感」でいい、99の理由』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

書類をめくりながら分析するビジネスウーマン
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“一人勝ち”なんてありえない

「与える人」こそ恵まれる――仕事がうまく回る人のマインド

二元論の最たるものは「勝つか、負けるか、二つに一つだ」というような考え方でしょう。かつてビジネスパーソンを「勝ち組」「負け組」などと二つに“分類”したのは、それを象徴するような概念でした。

いまは「WIN-WINの関係」が重視されています。勝ち負けをつけようとすると、自分の利益だけを優先することになります。

そういう考え方では人間関係がギスギスして、結果的に誰のためにもならないことに気づいたのかもしれません。

その点、仏教は自分より他人に利益を与え、幸福になってもらうことを悦びとする教えです。その根本にあるのは「諸法無我」――「この世のすべては関係性のうえに成り立っている」という思想です。

別のいい方をすれば、「人はみな、生きとし生けるものすべてに支えられて、生かされている」ということ。だから他を利することが大事で、そういう「利他」の心を持てば、仕事も人生も、すべてがうまく回るのです。

自分を大事に思うなら、まず他人を大切にする。心の方向を自分から他人へシフトしましょう。