新型コロナウイルス禍を境に収益力を大幅に向上させている日本郵船。パンデミック当時、社長を務めていたのが現在は同社で会長を務める長澤仁志氏だ。危機においてもチャンスを掴める経営者は、どのようにピンチと向き合っているのか――。

世界中でロックダウン「このままでは倒産」

日本郵船は1885年に創業された、非常に長い歴史を持つ会社です。それがついに私の代で終わってしまうかもしれない――。そうした危機感を本気で抱いた出来事がありました。まだ記憶に新しい、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大です。

長澤仁志
長澤仁志(ながさわ・ひとし)
日本郵船取締役会長。1958年、京都府生まれ。80年神戸大学経済学部卒業後、日本郵船入社。2019年に社長就任。23年より現職。日本経済団体連合会(経団連)副会長も務める。(撮影=大槻純一)

19年の末に、中国で謎の感染症が広がっているというニュースは聞いていました。ただ、それまではどこか他人事。ただごとではないと気づいたのは、翌年2月、「ダイヤモンド・プリンセス」号の船内で集団感染が起きて横浜港に入港してからです。