就職氷河期問題とは何なのか。雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんは「雇用やキャリアの専門家は氷河期世代でも正社員になれる人はすでに正社員になっており、これ以上の対策は……と口を揃える。必要以上に深刻に報じるマスコミも政府も、雇用の統計と現場のリアルを読み切れていないのではないか」という――。
就職は厳しかったが、その後「正社員化」が進んだ
就職氷河期に大学を卒業し、まともに就職できず、そのまま非正規就労を続ける人たちは、こと男性に限ると、全く多くはなく、他世代と比べても少ないくらいだ。前回はこの事実を、労働力調査を基に示した。
確かに就職氷河期に大学を卒業し、その時点で正社員になれなかった人は多い。が、その後、徐々に正社員化が進んでいった。今回はその状況を見ていくことにしよう。
最初に、就職氷河期とはどれほど厳しいものだったのか、をデータで示しておく。
図表1は、卒業時点で無業(進路未定・一時的な仕事に就いた人)だった人数と、その卒業生全体に占める割合を示したものだ。
2000年~2003年の間、無業者割合は25%を超え、卒業生の4人に1人以上が無業だった。これだけで、超氷河期の新卒就職が難しかったかが十分に分かるだろう。
ただし、これが実態以上に喧伝されている嫌いがある。
正社員で就職できた人のほうがはるかに多い
この時期でも、正社員就職できた人の数は、無業者よりもはるかに多い(図表2)。超氷河期の就職数は30万人ほどであり、無業者の倍以上いるのがわかる。こうした現実が忘れられて、誰も彼もが就職できなかったように言われていることが、一つ目の間違いだ。
氷河期前のバブル時代は就職数が確かに多かった。それでも、学年当たりの就職数は35万人に届かないくらいであり、超氷河期との差は5万人弱しかない。その程度の差なのだ。