とはいえ、その3つを兼ね備えた人材ならば、どこの人事部だって喉から手が出るほど欲しいはずだ。
そこを見分けるにはあるコツがあるという。
「相手が言ったことではなく、言わなかったことを考えるんです。
私が必ず聞くのは『どうしてこのホテルで働きたいのか』『仕事の中でのモチベーションは何か』『仕事でハッピーになるのはどういったときか』の3点ですが、そこで返ってきた答えだけではなく、言わなかったことが何なのかに着目するのです。
非常に日本的な概念かもしれませんが、行間を読み取るのです。その人があえて言葉にしなかったこと、発言するときの声の高さ、言い回し、すべてをフィーリングで感じ取るのです。
実は意識改革を面接相手にもしているんです。『私は従業員のボスではありません。我々にとってのボス、それはゲストなんです』と。みなさん、びっくりしてますね」
究極のホテルの実現のために、「従業員すべてが総支配人」(ノッカートさん)という最大限の権限を持っている。それぞれのパッションで宿泊客1人ずつに最高のサービスを施してほしい。それがリッツ・カールトンの理念なのだ。
改めてチーフコンシェルジュの住吉さんの言葉を思い出す。
「人はどこに泊まったかなんてことは忘れます。けれども『何をしてくれたか』という経験は忘れません。そういう思い出をできる限りつくることで初めて、『ワオ』という感動が生まれると思っています」
※すべて雑誌掲載当時
(小原孝博=撮影 ザ・リッツ・カールトン東京=写真提供)