違和感を言葉にできない。どうする
几帳面なブルドーザー――。
同僚たちからはそう評されている。身長187センチ、ラガーマンのようながっしりとした体格に、繊細な神経を兼ね備えた人物、ということらしい。
杉浦克典(アサヒビールマーケティング本部チーフプロデューサー)が2010年、持ち前のこまやかさと押しの強さで大成功に導いたのが、“氷点下のスーパードライ”だ。発想の原点はごく単純だった。
スーパードライの販売実績が、10年ぶりに4カ月連続(10年6~9月)で前年水準プラス。その原動力は、猛暑も加勢した販売戦略にあった。(PANA=写真)
「昔から『スーパードライはキンキンに冷やして飲むのがうまい』というお客さんの声を聞いていたんです。だったらこれ以上冷たくならないっていうところまで冷やしたスーパードライを提供したらどうだろうっていうのが最初の発想だったんです」
通常、ビールは4~6℃が適温とされている。それを凍結する寸前のマイナス2℃程度まで冷やせる環境を提供すれば、新しいビールの楽しみ方が提案できるのではないか。
杉浦はまず家庭でそれができるよう、「コールドクーラー」の開発に着手した。これをキャンペーンの景品にする。さらに氷点下のスーパードライを体感してもらう場として、どこかでバーをオープンさせよう。これが杉浦のアイデアだった。
決して斬新な発想ではない。むしろこの提案を受けた杉浦の上司、東海辰弥も、「こんなアイデアでいけるのか?」というのが正直な感想だったという。
「いまさらって感じもありましたしね。バーを開いても人が来るのかなって(笑)。ただ杉浦なりにしっかりと準備をしていたようですし、会社としても『スーパードライをもう一度しっかり立ち上げたい』という方針を持っていましたから、チャレンジしてみようかと」(東海)
杉浦克典
1970年、愛知県生まれ。93年立命館大学経済学部卒業、アサヒビール入社(西宮工場物流部配属)。94年四国地区本部営業企画部。99年本店営業部。2005年営業部二部。08年ビール戦略部。10年、マーケティング本部チーフプロデューサー。
バーのコンセプトづくりには社内の人材をフルに活用した。業務用の営業マンで、店舗づくりには詳しいと豪語している先輩社員や、広告畑でクリエーティブなことが得意な先輩社員のもとを訪ねては「自分はこんなコンセプトの行列ができる店をつくりたい」という思いを語り、相手の反応を確かめる。
「後輩よりもまず先輩をつかまえて話します。そのほうがポジティブな意見もネガティブな意見もはっきり言ってもらえるでしょ? 自分もそうなのですが、目上の人には、遠慮してしまうもの。とにかく自分なりの仮説をつくって、いろいろな人にぶつけてみて、足りないところ、過剰なところをつぶしていく。あんまり深く頭では考えません(笑)」
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント
