「外国の方ははっきりとご自分の目的や要望をおっしゃるので、こちらとしても非常にわかりやすいんです。ところが日本人は性格的にも控えめな方が多いので、はっきりとはご要望を口になさいません。人はそれぞれ生まれ育ってきたバックグラウンドが違います。どのようなサービスを心地よいと感じるか、不快と感じるかは、結局のところ趣味嗜好の問題です。私は仕事上、よくレストランの予約なども承りますが、極端な話をすれば、回転寿司とすきやばし次郎のどちらを好むかという問題も、最終的にはその人の好みの問題になってくると思うんです」
とはいえ、リッツ・カールトンに滞在中の食事回数は限られている。2泊なら2回しか夕食のレストランを推薦するチャンスは与えられない。
「もしそこで失敗したら、お客様はリッツ・カールトンに対して最悪なイメージを抱いて帰られることになってしまいます。しかもそれが宿泊最後の夜であったとしたら……。私がお客様でも頭にきますね」
それを避けるため徹底しているのが、宿泊客1人1人への細かなリサーチだ。チェックインからチェックアウトまで、何気ない会話に潜む情報、他のスタッフに漏らした言葉を拾い集め、こちらが勧めたレストランから戻ってくる時間を見計らってロビーにいて、さりげなく感想を聞くようにしている。国内の高級ホテルに勤務経験のある住吉さんだが、他のホテルとリッツ・カールトンには大きな違いがあるという。
「通常のホテルでは、部署をまたいでのサービス、特にホテルの外に出てまでのサービスは認められていませんでした。たとえばお客様の代わりに列車のチケットを取りに行ったり、買い物に行ったり。ところが、ここリッツ・カールトンではそれが認められているんです」
ほとんど制限されることなく、とことんまでサービスを工夫することができる例にはこんなことまである。