行かなかったら、同じままだったと思う

JR常磐線四ッ倉駅。阪田さんが暮らす町の駅だ。

湯本高校3年の阪田健太郎さんは、昨10月に東京で行われた「ビヨンドトゥモロー」のワークショップにも参加している。「ビヨンド~」は、連載第44回目の多賀城編《http://president.jp/articles/-/8255》でも書いた被災地教育支援事業だ。そこには「TOMODACHI~」参加者を含む高校生たちが集まり、被災地(と書くと阪田さんに怒られるかもしれないが)復興のアイデアを10のグループに分かれて考える作業が行われた。

「津波に流された町を、中通りの一角に建て直そうって計画があるらしいんですけど、受け入れる側との間に確執みたいのが出てきて、なかなかコミュニティをつくるっていうことができないって話があるんです。でもビヨンドで、『若い連中同士だったら、そういう確執って少ないんじゃないか』って話になって。考えたのが、若者と若者が仲良くなって、大人に呼びかけていったらいいんじゃないのっていう解決案なんです。高校生を取り入れていろんな問題を解決できないかなっていう俺の夢も、そういうかんじで」

その組織、儲かりそう?

「儲からないでしょうね(笑)。でも、すごい、大きなことにできるんじゃないかなと思って」
阪田さんがそういうことを考えるようになったのは、3年生になって進路決定が目の前にあるからですか。

「いや、俺が変わったのは『TOMODACHI~』に行ったことがきっかけです。行かなかったら同じままだったと思う。俺、2年のときはなんも考えてない。とりあえず、勉強しとけばいいか、みたいな(笑)。地元で公務員とかになって、街のほうで働いて、四倉に住んで帰ってこれる距離だったらどこでもいいかなとか思ってました。俺が地元でずっと付き合ってるやつらは、みんな地元が好きで、みんな地元に帰って来るやつらばっかり。とりあえず外に出ても絶対帰って来るし。四倉の中で働いてるやつもすごい多くて」

四倉から出て行くと裏切り者とか言われたりしませんか。

「言われるでしょうね、たぶん。おまえ、四倉人じゃねぇって言われます」

出て戻って来たら、負け犬って呼ばれたりしませんか。

「いや、そういうやつらじゃないんで。たしかに出て行くときは、おまえ四倉人じゃねぇって言われますけど、戻って来たら、たぶんふつうに歓迎してくれます。浜は四倉だけじゃなくて、小名浜とかもすごい強いですよ、地元愛が」

こちらの頭の中に「浜」で収録されたある映画の場面があるので訊いてみた。「浜」は地元愛に比例して、ヤンキー度数も高いのでしょうか——この問いに阪田さんが「高いんじゃないっすかね」と答え、小名浜に暮らす白岩さんも「高いですね、浜は」と答える。続けて、阪田さんが「父親の時代の四倉」を語ってくれた。