出生率0.72の韓国ほどでないものの、日本も過去最低の1.20だったと発表された(2023年)。統計データ分析家の本川裕さんは「2020年に50歳を迎えた女性の無子率、すなわち生涯無子化率を見ると、最低はメキシコの6.3%、最高は日本の27.0%となっている」という――。

欧米と比較しても深刻な日本の少子化

上川陽子外相が5月半ば、静岡県知事選での応援発言の一部である「うまずして何が女性」がメディアに見出しとして報じられたのは記憶に新しい。

これを受け、総理候補のひとりともされる上川外相の考え方は「女性は子どもを産む存在だ」という自民党の古い考え方のあらわれであり、同じ女性への配慮に欠けると批判された。衆議院総選挙がいずれ行われるという空気もある中、上川氏は発言をすぐ撤回・釈明した一方で、SNSの中にはメディアが得意とする「言葉狩り」「切り取り」などとして発言を擁護し、女性への配慮を求める側を批判する言説が広がり、話題となった。

しかし、こうしたやり取りとは裏腹に、日本ほど女性と出産がむすびついていない国はない実態を示すデータもある。今回は、この点をめぐる統計データを紹介することとする。

少子化は、親が生み育てる子どもの数が少なくなる傾向を示す用語であるが、内容としては、子どもが2人でなく、1人というように子ども数が少なくなる傾向と子どもをそもそも産まない無子化というべき傾向と2つが合わさっている。

まず、少子化全体を示す出生率の動向を見たうえで、そのうちの無子化の傾向を示すデータを取り出して確認していこう。

少子化を示す代表的な指標データとして、繰り返し参照されるのは合計特殊出生率であり、単に出生率といった場合にはこれを指すことが多い。合計特殊出生率は女性の年齢別の出生率を合計したものであり、女性が一生のうちに産む子どもの数を示している(生まれた年代の異なる女性の出生率の合計なので仮想的な数字であるが)。なお、総人口当たりの出生率は、別途、粗出生率と呼ばれることが多い。

日本と主要国の合計特殊出生率(以下、出生率と呼ぶ)に関し、戦後の推移を図表1に掲げたので、これで出生動向の基本的な動きを確認しておこう。

日本の出生率は終戦後のベビーブーム期には4以上の高い値を示していたが、その後、高度成長期を通じ、主要先進国と同様に大きく低落していった。

日本の画期は1989年に訪れる。この年、出生率が急落し、過去最低だった干支が丙午ひのえうまの1966年の1.58を下回ったことから起こったいわゆる「1.57ショック」をきっかけに政府は少子化対策に本格的に取り組むようになったのである。

そして、2005年の1.26を底に上昇傾向に転じ、2015年には1.44まで上昇したが、その後、再度低下傾向に転じ、コロナの影響も加わってさらに低下を続け、発表されたばかりだが2023年には1.20と過去最低となった。将来「1.20ショック」と呼ばれることになるかもしれない下落である。

欧米も戦後は出生率が低下傾向であったが、諸対策の効果もあって1980年前後から回復傾向を示したのと比較すると、日本の出生率は長期低迷が目立っている。もっとも欧米も最近はコロナの影響もあってかやはり低下傾向にある。

日本より極端な出生動向を示しているのは韓国である。日本や欧米をずっと上回る高い出生率が1970年代まで長く続いたのちに一気に大きく低落し、2000年代以降に日本や欧米を大きく下回り、世界最低水準に落ち込んでいる。